国立新美術館の草間彌生展「わが永遠の魂」を見る


 国立新美術館草間彌生展「わが永遠の魂」が開かれている(5月22日まで)。草間は1929年、長野県松本市生まれ。近年海外できわめて高く評価され、最近10年間で価格が100倍になったと言われるほどだ。本展のキャッチフレーズも「稀代の天才芸術家草間彌生の全貌にせまる」とうそぶいている。たしかに草間は現代日本の美術家で国際的に最も成功した一人だ。ほかには河原温が続くくらいではないか。ただ国際的に成功したことがその芸術の高さを担保するわけではない。
 草間は無限に続くような網目や水玉模様を描いている。今回、いつものように鏡で四囲を取り巻いた空間に数多くの電球を設置した無限空間を思わせるインスタレーションもあった。
 また初期から制作している立体に、ボートや家具に銀色の柔かい布製のようなペニスがびっしりと植えられている作品がある。水玉や網目も含めてペニス様の立体も草間の思春期に体験した性的トラウマの痕跡ではないかとの想像が働く。
 草間を現代美術の世界に位置づければ、形容矛盾ではあるが、高機能性アール・ブリュットに分類したい。私がアスペルガー症候群(高機能性自閉症)とのボーダーラインであることと相似で、草間に対してこの言葉を使ってみたい。草間は国際的に評価が高い。しかし、そのことは草間の芸術が同様に高いことを意味しない。草間の芸術は新しい展開を導いたわけではない。ある種の孤立した芸術だ。
 会場にはきわめて多くの作品が並べられていた。花の立体に水玉模様を描いたほとんど幼稚な作品もある。タブローを見れば高い完成度を持ったものはあまり見当たらない。唯一感心したのが、「わが永遠の魂」と題された連作だ。広い一室に正方形のキャンバスS120号が132点展示されている。これらを独立した作品とみるのではなく、並べられた連作を一つの作品として見たときに、草間の色彩感覚のすばらしさと相まって初めて完成度の高さが実感できた。とは言うものの、個々の作品を見たらやはり評価するのがはばかられた。





 写真で紹介したのは「わが永遠の魂」を展示した部屋で、ここだけがケータイやスマホに限って撮影が許可されていた。
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草間彌生展「わが永遠の魂」
2017年2月22日(水)→5月22日(月)
10:00〜18:00(金曜日は20:00まで)火曜日休館
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国立新美術館
東京都港区六本木7-22-2
ハローダイヤル03-5777-8600
http://www.nact.jp/