鶴見俊輔「悼詞(とうし)」(編集グループSURE)を読む。1950年から58年間にわたって書かれた追悼集。125人が取り上げられているが、短い文でわずか3行、もっとも長いものはいとこの鶴見良行に対するもので12ページ、母親が10ページ、ついで9ページの竹内好と桑原武夫がつづく。ほかに、高橋和巳、志賀直哉、花田清輝、武田泰淳、長谷川四郎、深沢七郎、赤尾敏、藤岡喜愛、谷川雁、久野収、奈良本辰也、藤田省三、赤塚不二夫、姉の鶴見和子など印象に残った。「思想の科学」を編集していたからこその交遊の広さだろうが、みごとなものだ。400ページもの厚い本に仕上がっている。
発行・発売元の「編集グループSURE」はあまり聞いたことにない京都の出版社、名前から推測するに編集プロダクションだろうか。ホームページ(http://www.groupsure.net/)を見ると、本書は書店では販売していないという。トーハンや日販などの取次に取引口座を持っていないのだろう。それでいて版を重ねているようなので、すごいと思う。
さて、鶴見俊輔は今まで何冊か読んできたが、この「悼詞」を読んでこんなに文章の下手な人だったかと驚いた。川端康成が弔辞を依頼されると、亡くなった作家の作品を徹底的に読み込み、その作家の文体で弔辞を書いたというエピソードを思い出した。川端ほどでなくても、もう少し文章を練っても良かったのではないかと不満が残る。いや、追悼文にはなかなか名文が多いのだ。