2020-01-01から1年間の記事一覧

『証言・昭和の俳句 上』を読む

先に読んだ下巻に続いて、『証言・昭和の俳句 上』(角川選書)を読む。黒田杏子が聞き手となって、著名な俳人たちにインタビューしてまとめたもの。取り上げられた俳人は、桂信子、鈴木六林男、草間時彦、金子兜太、成田千空、古館曹人の6人。 六林男が内輪…

高橋源一郎『誰にも相談できません』を読む

高橋源一郎『誰にも相談できません』(毎日新聞出版)を読む。毎日新聞におよそ5年間にわたって掲載された「人生相談」から100本を選んだもの。主に家庭内の悩み、夫婦や親子、嫁姑、恋人、友人、悩みは様々だ。『アンナ・カレーニナ』の有名な言葉「幸福な…

冨山和彦『コロナショック・サバイバル』を読む

冨山和彦『コロナショック・サバイバル』(文藝春秋)を読む。副題が「日本経済復興計画」というもの。佐藤優が毎日新聞に書評を書いている(6月6日付)。それを引く。 冨山氏は、新型コロナウイルスがもたらす経済危機は3段階で到来すると予測する。第一波…

アートスペース羅針盤の沢登丈夫個展を見る

東京京橋のアートスペース羅針盤で沢登丈夫個展が開かれている(8月23日まで)。沢登は会期最終日の8月23日に77歳の誕生日を迎えるという。しかし今回が初個展なのだ。 沢登は東大を卒業後、大手の化学メーカーに勤務した。実は沢登は年季の入った美術のコ…

ツタの害虫スズメガの幼虫

ベランダにツタの鉢植えが5鉢ほど並んでいる。一番古いものは持ち込んで40年ほどになる。持ち込むというのは鉢上げすることだ。で、その大事なツタの葉が歯抜けのように惨めな姿になっているのに気が付いた。鉢の下に黒い細かい粒が落ちている。どうやら糞…

『証言・昭和の俳句 下』を読む

『証言・昭和の俳句 下』(角川選書)を読む。黒田杏子が聞き手となって、著名な俳人たちにインタビューしてまとめたもの。この下巻では7人の俳人が語っている。津田清子、古沢大穂、沢木欣一、佐藤鬼房、中村苑子、深見けん二、三橋敏雄。 話が面白かったの…

山鳥重『「気づく」とはどういうことか』を読んで

山鳥重『「気づく」とはどういうことか』(ちくま新書)を読む。山鳥は失行症・失語症・失認症・健忘症などの高次脳機能障害の専門家。臨床の現場から脳の認知について独特の研究をしている。山鳥の『言葉と脳と心』(講談社現代新書)も極めて興味深く読ん…

どどめ色という不思議な色

朝日新聞の校閲センターの佐藤司が「ことばサプリ」というコラムに「どどめ色」を取り上げていた(6月20日、朝日新聞)。校閲センターといえば言葉の専門家、半端な部署ではない。ただ、このことについては書きづらく2か月近く取り上げるのを躊躇してきた。 …

佐藤鬼房の句

毎日新聞の書評欄に小島ゆかりが『佐藤鬼房俳句集成/第1巻 全句集』(朔出版)を紹介している(8月1日)。 やませ来るいたちのようにしなやかに なんとしなやかで、なんとしたたかな俳句かと思う。 そして他にも、 切株があり愚直の斧があり 鶺鴒(せきれい…

24年前の野見山暁治さんとマドモアゼル・セスネイのこと

古い写真を整理していたら24年前の野見山暁治さんを撮った写真がでてきた。1996年11月10日、練馬区立美術館で野見山暁治展が開かれたとき、会場で野見山さんが自分の絵について語るという日があった。その時撮ったもの。野見山人気は大変なもので会場が観客…

TOWEDの「整頓された混乱」を見る

東京墨田区京島のギャラリーTOWEDで「整頓された混乱」が開かれている(8月29日まで)。高橋直宏と野原万里絵の二人展だ。 高橋は1991年北海道生まれ、2020年金沢美術工芸大学大学院博士後期課程美術工芸研究科彫刻分野 博士(芸術)学位を取得している。2017…

山本弘の作品解説(98)「幼」

山本弘「幼」、油彩、F12号(60.6cm×50.0cm) 1978年制作、48歳のときのほとんど最晩年の作品。最後に到達した境地と言えるだろう。 実はキャンバスが貼られている木枠が割れていてキャンバスが歪んでいた。そのためまだ一度もじっくり見たことがなかったし…

篠田正浩監督『乾いた花』を見る

京橋の国立映画アーカイブで篠田正浩監督『乾いた花』を見る。主演が池辺良、相手役が加賀まりこ、原作が石原慎太郎。見終わって原作を50年ぶりに読む。 映画は面白かった。さすがは篠田正浩監督だ。インテリヤクザの話、映画も原作もインテリヤクザとは言っ…

20年ほど前の古い写真

古い写真を整理していたら20年ほど前の画家たちの写真が出てきた。あの頃はコニカビッグミニというコンパクトカメラを持ち歩いていて気になったものを撮影していた。もちろんフィルムカメラの時代だ。 それをここに紹介して記録とする。 2000年8月の石川雷太…

福島次郎『三島由紀夫―剣と寒紅』を読む

教えてくれた人がいて、福島次郎『三島由紀夫―剣と寒紅』(文藝春秋)を読む。著者は大学生のとき三島の『仮面の告白』を読み、自分と同じ趣味(男色)の人がいると、三島に興味を持ち、『禁色』を読んでその中に出てくる男色家たちが集まる店の場所を聞くた…

ピアニスト、レオン・フライシャーが亡くなった

レオン・フライシャーが亡くなったと朝日新聞に報じられていた(8月4日)。 フライシャーはアメリカのピアニスト、8月2日、92歳で亡くなった。 記事に「30代で筋肉が収縮する難病となり、長年にわたって左手で演奏を続け、指揮、教育に活動の場を広げた」と…

新しくオープンしたギャラリー CADAN YURAKUCHOを訪ねる

東京有楽町の駅前に新しくギャラリーCADAN YURAKUCHOが移転オープンしたというので訪ねてみた。CADANはContemporary Art Dealers Association Nippon(日本現代美術商協会)の略称で、現代美術の画廊42社と法人特別会員、個人賛助会員から構成されている。代…

ガルリH(アッシュ)の亀元円展「Hidden Place」を見る

東京日本橋小舟町のガルリH(アッシュ)で亀元円展「Hidden Place」が開かれている(8月8日まで)。亀元は1992年東京都生まれ、2016年武蔵野美術大学造形学部彫刻学科 卒業、2018年武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻彫刻コースを修了している。 2019…

西研『ヘーゲル・大人のなりかた』を読む

西研『ヘーゲル・大人のなりかた』(NHKブックス)を読む。第1刷が1995年、もう25年前になる。翌年購入して今まで読まないで積んでいた。自分がヘーゲルを読んで来なかったことに気が付いた。岩波文庫の『小論理学』を読んだだけだったと思う。それは40年以…

山田洋次『映画をつくる』を読む

山田洋次『映画をつくる』(国民文庫)を読む。第1刷が1978年だから42年前の出版。この時山田洋次47歳、『男はつらいよ』も17作まで撮ったところだ。もう松竹のドル箱監督になっていた。松竹では大島渚と同期、ほかに篠田正浩、吉田喜重などがいた。 最初に…

落ちていたツバメの雛

娘と駅ビルで待ち合わせ、家を出たらマンションの通路にゴミが落ちていた。よく見ると死んだツバメの雛だった。実はその日の朝も同じ場所で死んでいたツバメの雛を見た。通路の上にツバメの巣があるのだった。娘に少し遅れると連絡して家に戻りティッシュと…

アートギャラリー DELL’ARTE(デラルテ)のグループ展で沓澤貴子を見る

東京外苑前のアートギャラリー DELL’ARTE(デラルテ)でグループ展 「緑の階調 ―鎮静の空間のために―」が開かれており、そこに出品している沓澤貴子の作品を見る。とても良かった。 沓澤は静岡県生まれ、1996年に武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業し、19…

ギャラリーQの金昭希展を見る

東京銀座のギャラリーQで金昭希(キム・ソヒ)展が開かれている(8月8日まで)。これは毎年恒例の銀座の現代画廊が共同で企画している「画廊からの発言―新世代への視点2020」のひとつ。金は1983年、韓国生まれ、2007年に弘益大学美術学部版画専攻卒業、201…

O美術館の「座の会展2020」を見る

東京大崎のO美術館で「座の会展2020」が開かれている(7月30日まで)。2012年から始まる「座の会」は20代から70代の日本画・漆技法などの作家、現代美術系作家による自発的に新たな表現を模索研究するグループ展。今年が9回目となる。 知人の作品を中心に何…

コバヤシ画廊の黒宮菜菜展を見る

東京銀座のコバヤシ画廊で黒宮菜菜展が開かれている(8月8日まで)。これは毎年恒例の銀座の現代画廊が共同で企画している「画廊からの発言―新世代への視点2020」のひとつ。黒宮は1980年東京都生まれ、2007年に京都造形芸術大学芸術学部を卒業し、2015年に…

「画廊からの発言―新世代への視点2020」が始まる

東京銀座・京橋を中心とする現代美術の画廊が共同主催する「画廊からの発言/新世代への視点2020」が明日から始まる。これは恒例の8軒の画廊が推薦する40歳以下の若手作家8人の個展だ。現代美術の代表的な貸画廊が選んだ作家たちだから見逃せない重要な企…

公団住宅の「スターハウス」が保存される

今日の朝日新聞の夕刊に「後世へ伝える集合住宅の星」という記事が載っていた(7月25日)。小見出しが「赤羽台団地のスターハウス(東京都北区)」とあり、大きな写真も載っている。 記事によると、 都市部の勤労世帯に向け、旧・日本住宅公団(現在の都市再…

吉田喜重監督作品『炎と女』を見る

シネマヴェーラ渋谷で吉田喜重監督作品『炎と女』を見る。1967年現代映画社制作、岡田茉莉子主演。監督の吉田喜重は東大仏文科出身、卒業論文はサルトルでサルトリアンだった。ここまでは大江健三郎と同じ経歴だったが、大江が四国の森の中の土俗的な村を作…

プロコル・ハルムの「青い影」の訳詞のこと

プロコル・ハルムの「青い影」は世界的にヒットした名曲だ。ジョン・レノンが絶賛したと聞いている。You Tubeで聴いていたが、訳詞が難しくて意味が分からない。最初の訳詞がこれ、 私たちはファンダンゴみたいにスキップで 部屋の向こうまでカートを蹴飛ば…

ヒノギャラリーの小林良一展を見る

東京八丁堀のヒノギャラリーで小林良一展が開かれている(8月8日まで)。小林は1957年栃木県佐野市生まれ、1987年東京造形大学美術学科絵画専攻を卒業し、1997年五島記念文化財団美術新人賞を受賞、同財団の助成によりニューヨークにて1年間の海外研修を…