鮎川信夫 他『現代詩との出合い』(思潮社 詩の森文庫)を読む。副題が「わが名詩選」とあり、7人の詩人が選んだアンソロジーになっている。鮎川の他には、田村隆一、黒田三郎、中桐雅夫、菅原克己、吉野弘、山本太郎が選んでいる。
鮎川は萩原朔太郎、西脇順三郎、森川義信を選んでいる。森川は、鮎川が「死んだ男」で「M」と呼びかけた友人だろう。鮎川信夫「死んだ男」の最終章を引く。
埋葬の日は、言葉もなく
立合う者もなかった、
憤激も、悲哀も、不平の柔弱な椅子もなかった。
空にむかって眼をあげ
きみはただ重たい靴のなかに足をつっこんで静かに横たわったのだ。
「さよなら、太陽も海も信ずるに足りない」
Mよ、地下に眠るMよ、
きみの胸の傷口は今でもまだ痛むか。
田村隆一は、中桐雅夫の詩と、アンソロジー「荒地」の序文「Xへの献辞」を挙げている。黒田三郎の挙げたのは、金子光晴、安西冬衛、三好達治、丸山薫にボードレールと「ルバイヤート」だった。中桐雅夫は、鮎川信夫の「囲繞地」という150行以上の長い詩、それに堀口大學、萩原朔太郎、室生犀星。
菅原克己は、はたち前に愛唱していたというロゼッティやド・グウルモンやヴェルハアランなどの古い詩や歌詞など。あとは室生犀星、山村暮鳥、石井健吉、小熊秀雄など、そして最後にシュペルヴィエル。
吉野弘は職場で毎週1回、詩をガリ版に刷って配っていたという、その配布した詩を14篇紹介している。黒田三郎、岩田宏、谷川俊太郎、茨木のり子、川崎洋、長谷川龍生、嶋岡晨、安水稔和、高良留美子、加藤八千代、北村太郎、そしてプレヴェール、ポンジュ、シェイクスピアと並ぶ。
山本太郎は、日本書記、アイヌのユーカラ、日本の民謡などを引いている。
このようなアンソロジーはいくつあっても良いものだ。選者によって選ぶ詩が違ってくる。いろんな詩人が紹介されて、こんな詩人がいたのかと教えられることが多い。