大岡信ほか『忘れえぬ詩』を読む

 大岡信ほか『忘れえぬ詩』(思潮社 詩の森文庫)を読む。8人の詩人たちが選んだ「忘れえぬ詩」のアンソロジー大岡信のほかに、那珂太郎、飯島耕一岩田宏、堀川正美、三木卓が書いている。

 大岡は万葉集以前の古事記などから応神天皇の歌、万葉集古今集などのざれ歌から、和泉式部西行、定家、梁塵秘抄方丈記道元語録、良寛までを取り上げている。

 那珂太郎は「ルバイヤアト」から「百人一首」、西行ときて、西脇順三郎の「水」を引く。ついで連歌の「水無瀬三吟」から、続いて蕉門俳諧の「七部集」を詳しく紹介している。

 飯島耕一ランボーの『地獄の季節』小林秀雄訳、小林の友だちでもあった富永太郎ボードレール中原中也の「秋の一日」、萩原朔太郎の「薄暮の部屋」、北原白秋の「接吻の時」、ラルボーの「序詞」を上げている。

 岩田宏は「神曲地獄変第5曲、マヤコフスキーの「笑いの設計図」、エリュアールの「真夜中ちかく」、吉野臥城の「石工」、この吉野臥城は明治~大正の啄木以前の社会主義詩人と紹介されている。

 堀川正美は1931年生まれ、「わたしには、1945年の終戦から約3年間というもの、なにをしていたのか、どういうことがあったのか、およそ記憶が失われたままである」と書き始める。「今になってもろくろく想い出せないままでいる」と。堀川の選んだ詩は、ロレンツォ・デ・メディチの小唄、ルイ・アラゴンの「ゴビ」、エリュアールの「生ける骨灰」、鎌田喜八の「不運」、堀内幸枝の「沼地」、谷川雁の「おれたちの青い地区」、窪田般彌の「烏賊」これは74行を引用している。最後に作者不明の詩を。

 三木卓は『プー横丁にたった家』から「プー作の物音」、マザーグースの「まがった 人が」と「フランスの王さま」、関根弘の「海」、そして平林敏彦の「ひもじい日々」を取り上げる。この詩について、

 

 平林の詩は、まるで自分自身のためにだけ書いているように勝手でぶっきらぼうで読みづらかったが、好きで、よく読んだ。

 

 と書いている。次いで、」飯島耕一の「言葉について」、岩田宏の「土曜の夜のあいびきの唄」、ロシアの詩人ブロークの「十二」、マヤコフスキーの「とってもいい!(ハラショー)」の一部を引いて終わる。