椿玲奈『カイメン』(岩波科学ライブラリー)を読む。カイメンは英語でスポンジ、食器洗いの人工のスポンジの元となった海綿動物だ。動物なんである。しかし、カイメンには脳も神経も消化管や筋肉すらない。
カイメンは水中に漂う植物プランクトンなどをこし取って食べる。これを「ろ過食」という。カイメンのスカスカ構造は身体中に張り巡らされた水路網だという。カイメンは海水を取込み、そのなかの酸素を利用して呼吸すると同時に小さな有機物をこし取って食べている。
カイメンは種類によって1ミリ以下の小さなものから、3メートルを超える大きなものまである。カイメンの寿命は1万年を超える世界1長寿の種類も見つかっている。
カイメンはサンゴ礁のようなカイメン礁を作る。大きいものは高さ20メートル、面積700平方キロメートル以上という、東京23区がすっぽり入ってしまうほどの巨大な構築物だった。しかし、それも人間の漁業活動によってすでに半分が破壊されてしまっている。カイメン礁は1メートル育つのに220年かかると言うのに。
カイメンのほとんど誰も知らない不思議な生態が書かれていてとても興味深かった。固着生活をする動物の有性生殖について、フジツボが体長の8倍もあるペニスを伸ばして近くの個体と交尾するというのも驚いた。人間でいえば12メートル以上の長さになる。そんなのを近くの個体に伸ばすというのもハレンチじゃないだろうか。