東京神楽坂の√kコンテンポラリーで浜田浄展「記憶の地層―光と影―」が開かれている(10月24日まで)。浜田は1937年高知県出身、1961年に多摩美術大学美術学部油画専攻を卒業している。2015年には練馬区立美術館で個展が開かれている。
√kコンテンポラリーは1階と2階を使った広い会場で、公立美術館の練馬区立美術館よりも浜田の大作が一層見栄えのする展示になっている。しかも高齢にもかかわらず近作が並べられている。
作品の多くは合板に絵具を塗り重ね、それを彫刻刀などで彫り=削り、その凹面に絵具を塗り、彫られていない凸面に別の色の絵具を塗っている。画面は木版画の版木のような凹凸で構成されている。一見ミニマル・アートを思わせるが、画面は無機的ではなく、表情を持っている。だが中心はなく均質な画面が広がっている。
また紙に鉛筆で描いたドローイング作品も展示されている。それはただ画面が鉛筆で塗りこめられているように見える。しかし筆触(というのか)は見えない。普通の鉛筆を使って、短いストロークで線を描き、それをほとんど無限に繰り返し重ねて鉛筆の面を作っている。表裏に描きこんだ作品もある。すると、鉛筆のドローイングが鉛筆の面を作り、それは鉛筆で作られた物質に昇華しているように思える。
浜田は単一の作業を繰り返し行って作品を作っている。それは大変な作業だろう。作品は浜田の過剰な制作の時間が集積されたものであり、また繰り返し彫り込み塗りこめられた手作業の豊かな表情を持っている。
会期後半には一部作品の入れ替えも計画されているようだ。高齢の作家の若々しい作品をぜひ見てほしい。
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浜田浄展「記憶の地層―光と影―」
2020年9月19日(土)-10月24日(土)
11:00-19:00(日・月・祝日休廊)
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√k(ルートk)コンテンポラリー
東京都新宿区南町6
電話03-6280-8808