旅行する時のコツ

 古い資料を整理していたら、25年前の新聞の切り抜きが出てきた。以前も一度紹介したことがあったが、もう少し詳しく紹介したい。(宮崎章夫「旅の師匠」朝日新聞1995年6月6日夕刊)。
 宮沢は自分には「旅の師匠」がいると書く。あるテレビ局に勤めていたF氏と一緒に外国旅行したときの経験を書いている。

 たとえば、「トイレットペーパーは芯を抜いてバッグの底にでも入れておきなさい」と教えられ、その通りにしたら、ほんとうに便利だったし、「暗証番号をノートにメモしておくと鞄ごと盗まれたら使われます。数字をひらがなでメモしなさい。外国人にはわかりませんから」と、これには唸った。
 ほかにも、日本の雑誌についている読者用はがきに自分の顔写真を貼り、瓶の栓でスタンプらしきものを押して学生証だと言い張る方法とか、飛行機のチケットを洗濯機で洗い、ちょっとだけ加工する方法など、犯罪すれすれのものまであった。
 F氏は、南半球だけで30数か国旅行をしたという。北半球は嫌いだから行かないのだそうだ。「国内旅行は、金がかかります」と、もっぱら物価の安い国ばかりに行く。旅行中のF氏の口癖は、「無駄なお金を使っちゃいけませんよ。あとからくる旅行者に迷惑ですからね」というものだ。少し金があると思っていい気になっている日本人旅行者は、F氏にとって敵のような存在だった。
 「まずは値切りなさい」と、どこに行っても教えられる。じゃあ、単なる貧乏旅行なのかというとそうでもない。日本に帰る直前、シンガポールに立ち寄ると、空港からいきなり高級ホテルに予約を入れた。その日の夜は贅沢三昧だ。これはちょっと、ただ者でないというのが、私がF氏に抱いた感想である。(後略)

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 32年前に作った2冊目のパスポートは結局一度も使わなかった。まだ黒い髪の毛がふさふさとある私の写真(40歳)は、歳月の急速な流れを教えてくれる。身長も今より2cmは高かった。思いおこせば、この頃クライアントから一緒に韓国旅行をすることを提案されてパスポートを作ったのだった。しかし、やはり行きたくなくてこちらで旅費を負担して一人で行ってもらった。行きたくなかった理由は抱えている沢山の仕事に支障が出るからだった。同じ理由で道具一式をあげるから始めろと言われたゴルフも断った。まったく時間の過ぎ去ることの速いことよ。
 今年19歳半で送った猫も徐々に弱っていって亡くなった。生物が衰えていくのはやがてやってくる死に滑らかにつなぐためだろう。よっしゃ!