南千住のホテル街


 連休のはじめに毎年恒例の「こんこん靴市」が南千住の浅草玉姫稲荷神社で開かれている(4月28日・29日)。神社の境内で浅草にある36の靴生産業者が中心となって催すもので、約10万足の靴が並び、市価の6〜9割引きで購入できるというもの。

 南千住駅から浅草玉姫稲荷神社に向かった。途中明治通りとの交差点を渡ったが、そこが泪橋の交差点だった。泪橋といえば明日のジョーではないか。ジョーのライバル力石は30年以上前に亡くなった友人の活司によく似た顔をしていた。私も50年ほど前にこの辺りにあったドヤ街山谷で働いたことがあった。仕事を探して山谷の職業安定所に行くと、安定所内の窓口の前でやくざが丁半博打を開帳していて驚いた。茶碗にさいころを二つ入れて、左手に千円札の束を持ち、日雇い労務者に丁か半に張らせていた。丁半が同数揃うまで、丁方ないか丁方ないかとか、半方ないかとか呼びかけていた。毎度のことらしく、窓口の職員たちは見ないふりをしていた。さいころ二つの合計が奇数か偶数かで半か丁と決まり、やくざは外れた方の金を取って勝った方に賭けた金額の9割を渡していた。ショバ代が1割だった。
 泪橋あたりから神社までの間に小さな旅館やホテルがたくさんあった。昔ドヤと呼ばれた日雇い労働者のための宿でヤドをひっくり返してドヤと呼んだ。それがいまでは安い旅館や、外国人旅行者のためのホテルになっているらしい。街で何人もの外国人旅行者たちとすれ違った。昔のように日雇い労務者が昼間から酒を飲んでたむろしているのは一か所しか見なかった。






 50年も経てば街はずいぶん明るく変わっていた。
 南千住といえば、有名な鰻屋の尾花があった。いまでもあるだろうが、ここは天然ウナギが売り物で、昨今とても高価だろう。注文してからウナギを捌くので料理が出るまでとても時間がかかるのだった。