東京駅の銀の鈴という待ち合わせ場所でベンチに座って本を読みながら時間をつぶしていた時、目の前に若い娘が座っていた。その娘はミニスカートから太い足を出して組んでいて、iPodか何かをずっと見ていた。下を向いているので長い髪が顔にかかり、眼が全然見えなかった。ところが唇が魅力的だった。最初にそれを見て、すぐ本に目を落としたが、またその唇を見たくて、結局何度もその娘の唇を盗み見てしまったのだった。割合厚くぷっくりとした唇だった。それでモニカ・ヴィッティの唇を思い出した。
長い髪に隠れていて最期まで眼を見ることができなかったので、本当にきれいな娘かどうか分からないはずなのに、その唇には強く惹かれた。でも不意にその娘が立ち上がり、さっさと行ってしまった。あとに魅力的な唇だけを残して。そうか、「不思議の国のアリス」に登場するにやにや笑いだけを残して消えてしまうチェシャ猫の謎って、こういうことだったのかもしれない。
以前のエントリー「何が美人を決めるのか」にも書いたように、資生堂の広告で、美人を決めるのは唇なのだと言っていた。そのことが肯定的に思い出された。
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・何が美人を決めるのか(2008年6月20日)