写真評論家の飯沢耕太郎と詩人の伊藤比呂美が飯沢の蒐集した少女写真を見ながら対談した。
伊藤 少女の写真を集める人は飯沢さんを含めて、それでオナニーするのかしら。
飯沢 しないな。それはまた別な対象があると思う。
伊藤 でもふつう男がヴィデオとか集めて見るのは、オナニーのためでしょう。(中略)
伊藤 どれが一番性的に惹かれるの? 知的な好奇心から惹かれるのはどれ?
飯沢 そう言われたって……。
伊藤 これだったらオナニーできるってのはどれ?
飯沢 そういうのは、入れてないってば。(中略)
伊藤 (ハンス・ベルメールの人形の写真を見て)オヘソの赤いのなんか本当にいやらしい。まさに妊婦の感じね。妊婦の時にマスターベーションするのはとても気持ちがいいってある雑誌に書いたんだけど、本当に子宮が収縮して弛緩するのが分かるのよね。ベルメールを見るといつもその感覚を思い出す。
(季刊誌「デジャ=ヴュ」第10号より)
伊藤比呂美は大胆な発言をしているが、同じ行為を指すのに飯沢の場合と自分の場合で言葉を使い分けている。微妙だが、そこに何かあるのだろう。どんな言葉も歴史や価値を持っているのだから。