2012-04-01から1ヶ月間の記事一覧

HARMASギャラリーでの高橋大輔展がとても良い

江東区清澄にあるHARMASギャラリーで高橋大輔展が始まった(6月2日まで)。高橋は1980年埼玉県生まれ。2005年に東京造形大学絵画専攻を卒業している。同大学在学中に休学してインドに行っている。主な個展は、switch point、トキ・アートスペース、LOOP HO…

ギャラリーテムズの及川伸一展が今日で終わってしまう

小金井市のギャラリーテムズで及川伸一展「relation」が開かれている(4月29日まで)。残念ながら今日4月29日までの会期だ。及川は1949年東京生まれ。1980年から1992年まで独立美術に出品していたが、1992年からは個展を主な発表の場所としている。これま…

林あまりの過激な短歌

先に林あまりの過激な短歌を紹介した(4月10日)が、林の処女歌集『Mars★Angel(マース・エンジェル)』(河出文庫)こそ最も過激な表現が溢れている。その「ナナコの匂い」より。 ビー玉があるよとわたしにさわる指 リリアンみたいといとしむペニス 鳩の出…

みゆき画廊の井上敬一展

銀座6丁目のみゆき画廊で井上敬一展が開かれている(4月28日まで)。井上は1947年香川県生まれ、1980年に福岡教育大学美術研究科を修了している。作者の言葉から、 みゆき画廊では5回目、2年ぶりの個展です。 今、追求しているのは人の存在です。 暗い背…

さわだともこの変身

雑誌『月刊 たくさんのふしぎ』2011年12月号は「これ、わたし」と題された美術家さわだともこのセルフポートレート集だ。1ページに1枚の顔写真が載っている。すべてさわだ本人の顔でメーキャップが変えられている。さわだについて、巻末に紹介の文がある。…

金井美恵子『ページをめくる指』を読む

金井美恵子『ページをめくる指』(平凡社ライブラリー)を読む。楽しい読書だった。副題が「絵本の世界の魅力」といい、雑誌『母の友』に連載した絵本をめぐるエッセイをまとめたものに、石井桃子へのインタビューなどを加えている。最初に片山健の『タンゲ…

なびす画廊で瀧田亜子展が始まった

銀座なびす画廊で瀧田亜子展が始まった(4月28日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展は今回で12回目になる。特に2011年、2010年、2009年、2006年は春秋と年に2回も個展を行っている。 瀧田は紙に顔料で描いている。発色の研究に時間をか…

草間彌生自伝『無限の網』を読んで

草間彌生『無限の網』(新潮文庫)を読む。全体は5部から成り立っている。 第1部 ニューヨークに渡って −−前衛アーティストとしてのデビュー 1957−1966 第2部 故国を去るまで −−画家としての目覚め 1929−1957 第3部 反戦と平和の女王となって −−前衛パフ…

田端麻子展が開かれている

六本木のShonandai My Galleryで田端麻子展が開かれている(4月29日まで)。田端は1972年神奈川県藤沢市生まれ、1996年に多摩美術大学油画専攻を卒業している。田端はいつもいつも不思議なものを描く。今回の大きな作品は「寝床」と題されている。折れ曲が…

小林敏明『〈主体〉のゆくえ』を読む

小林敏明『〈主体〉のゆくえ』(講談社選書メチエ)を読む。副題が「日本近代思想史への一視角」。これがおもしろかった。日本近代思想で頻出する〈主体〉という言葉=概念の誕生から消滅までをていねいに読み解いている。 最初subject−objectを明治最初の哲…

ギャラリーなつかの古井彩夏展の鉄の立体が美しい

東京京橋のギャラリーなつかで開かれている古井彩夏展の鉄の立体が美しい(4月21日まで)。古井は1988年東京生まれ、2007年に女子美術大学立体アート学科を卒業し、現在同大学院に在学中だ。今年、銀座ギャラリー女子美で帆足枝里子との2人展を開いていた…

本棟造の民家のこと

小学校5・6年の時の担任の先生は宮嶋光男先生と言った。おそらく6年の夏休みに友人たちと先生の家に遊びに行った。もう50年も前になる。 先生の家に行っておどろいたことがあった。その家は私の隣家の御下(おした=屋号)の家と同じ構造だった。御下は村…

版画を買いたいと言った人に

絵の好きな知人が、有名画家(仮にKと呼ぶ)の版画を60万円で買おうと思うと言う。止した方がいいですよ、あんなのは本物じゃないからと言うと、本物だよ、だってサインがあるしと言われた。 有名画家の版画と称するのは多くエスタンプといって、オリジナル…

ホワイトストーンギャラリー銀座店の千住博展

銀座5丁目のホワイトストーンギャラリー銀座店で千住博展が開かれている(4月23日まで)。このビルは小さいがきれいな建物だ。ロケーションも伝統ある泰明小学校の並びといういい場所だ。もともとここは月光荘のものだった。月光荘はピアニストの中村紘子…

辞書の種類

朝日新聞の「オピニオン」で辞書の世界が取り上げられた(2012.4.10)。学者芸人と肩書きの付いたサンキュータツオさんにインタビューしている。サンキューさんによれば、辞書の編集はその哲学によってまるで違うという。 国語辞典の世界には、用例の三省堂…

夢枕貘の『仰天・プロレス和歌集』がおもしろい

夢枕貘の『仰天・プロレス和歌集』がおもしろい。これは1989年に集英社から単行本が発行され、1993年に集英社文庫が発行された。プロレスラーからの短歌の投稿を夢枕が選んで講評を加えるという趣向になっている。もう20年以上まえのことなので、プロレスラ…

原田マハ『楽園のカンヴァス』を読む

原田マハ『楽園のカンヴァス』(新潮社)を読む。ふだんあまり小説を読まないが、美術業界が舞台のようなので手に取った。謎のコレクターが所有するアンリ・ルソーの絵の真贋を巡って、美術館の学芸員と女性研究者が対決する。説得力のある鑑定をした者にそ…

糞は食えるか?

若い頃、もう30年以上前になるが、横浜で屋台をしていた。夜、屋台でラーメンを作って売っていたのだ。これはテキ屋の仕事で、大元に組長がいた。その下に代貸しがいて、代貸しが屋台の組織を仕切っていた。その下にわれわれがオヤジと呼んでいた直接の責任…

a piece of space APS & ギャラリー・カメリアの平体文枝展

銀座1丁目の奥野ビル5階にあるギャラリーa piece of space APSと隣室のギャラリー・カメリアで平体文枝展が開かれている(4月21日まで)。 平体は石川県生まれ、1989年に筑波大学芸術専門学群美術専攻を卒業している。2002〜2003年に文化庁派遣芸術家在外…

バラシロカイガラムシ

都内のある美術館の中庭のツルバラの太い幹が何やら白くなっている。近づいてよくみると、これはバラシロカイガラムシではないか。こんなにすごい被害は初めて見た。河合省三『日本原色カイガラムシ図鑑』だって、これほどひどい写真は掲載されていない。同…

林あまりの短歌

朝日新聞2012年3月31日の「うたの旅人」は、林あまり作詞、坂本冬美歌「夜桜お七」だった。林あまりが作詞したとは知らなかった。 林あまりは高校を卒業後成蹊大学へ進学する。前田夕暮の長男で歌人の前田透が文学部教授をしていたからだという。林は前田教…

中野剛志『日本思想史新論』がおもしろかった

中野剛志『日本思想史新論』(ちくま新書)がおもしろかった。江戸時代の思想家、伊藤仁斎、荻生徂徠、会沢正志斎に、明治の福沢諭吉を並べて論じている。それらが思想的に繋がっていると主張している。これは新しい見解だろう。伊藤仁斎はそれまで主流だっ…

堀内康司という画家がいた

新宿2丁目にあるフリー・アート・スペース・ポルトリブレで「作家&コレクター 自慢のコレクション展VIII」が開かれている(4月16日まで)。 25人ほどの作家の作品が並んでいるが、その中に堀内康司の作品が1点展示されている。堀内康司は1932年、東京生…

犬のふぐりの俳句

オオイヌノフグリが咲き始めている。歳時記の春の項には季語として「犬のふぐり」が載っている。その解説から、 ゴマノハグサ科に属する2年草。果実の形が似ているというのでつけられた名前がいささか哀れだが、愛らしい花である。日本自生の淡紅色のものと…

巷房で開かれている立原真理子展が興味深い

銀座1丁目のギャラリー巷房2と同階段下で開かれている立原真理子展が興味深い(4月7日まで)。立原は1982年生まれ、2006年に女子美術大学芸術学部洋画専攻を卒業し、2008年に東京芸術大学大学院美術研究科修士課程を修了している。2008年に銀座のフタバ…

今年の泉本奈生美展@コバヤシ画廊も良い

泉本奈生美展「−在るー」が銀座3丁目のコバヤシ画廊で開かれている(4月7日まで)。泉本はコバヤシ画廊で毎年個展を開いている。一つのモチーフを長年追求するタイプだが、昨年あたりからモチーフが少し変わってきた。フェルトのような布をテーマに描いて…

嵐山光三郎『文人悪妻』を読む

嵐山光三郎『文人悪妻』(新潮文庫)を読む。同じ著者の『文人悪食』に比べて少々落ちるようだ。無理もない、文人の性癖について書くなら本人が書いた五万という資料があるのに、文人の妻女について書こうと思っても資料が少ないのは当たり前だからだ。それ…

二流の美術館もある

アーロン・エルキンズ『画商の罠』(ハヤカワ文庫)を読んだ。画商が主人公の勤めるシアトル美術館にレンブラントを寄贈すると言ってきた。しかし寄贈の条件として、作品を見るだけでレンブラントかどうかを判断すること、科学的な検査は一切しないこと、レ…

田中三蔵『駆けぬける現代美術』を読む

2月末に田中三蔵氏が亡くなった。63歳だった。田中三蔵は朝日新聞の美術記者で、読売新聞の芥川喜好、毎日新聞の三田晴夫とともに新聞社の美術記者三羽烏と思っていた。芥川が読売新聞の日曜版1面に20年近く大きな写真と共に現存する画家を紹介し続け、田…

銀座スルガ台画廊の川越ゆりえ個展がおもしろかった

銀座スルガ台画廊の川越ゆりえ個展がおもしろかったが、もう終わってしまった(3月31日まで)。川越ゆりえは1987年富山県生まれ、2011年に富山大学芸術文化学部を卒業し、現在同大学院芸術文化学研究科在学中。2011年のシェル美術賞に入選している。 川越は…