堀内康司という画家がいた

 新宿2丁目にあるフリー・アート・スペース・ポルトリブレで「作家&コレクター 自慢のコレクション展VIII」が開かれている(4月16日まで)。
 25人ほどの作家の作品が並んでいるが、その中に堀内康司の作品が1点展示されている。堀内康司は1932年、東京生まれ、専門の美術学校では学んでいない。戦後の美術運動のひとつ「実在者」を結成した。ほかのメンバーは、靉嘔、池田満寿夫真鍋博らで、池田満寿夫を最初に評価したのが堀内だった。実在者は3回開いたグループ展で解散してしまったが、堀内は老舗のフォルム画廊で個展を続けた。
 しかし、堀内はなぜか30代の頃、絵を描くのをやめてしまった。そのまま亡くなるまで再び制作することはなかった。そして昨年2011年10月7日に78歳で亡くなっている。なぜ絵を描かなくなったか、未亡人にも語らなかったという。
 1996年3月、東京京橋の東邦画廊で「三者三態展」が開かれた。三者とは杢田たけを、山本弘、堀内康司だった。堀内の古い作品が展示された。その時のDMハガキに書かれた画廊主の文章から、

 長らく沈黙を通して来た堀内氏が、来年わが画廊で個展を開くことになりました。いかなる新風をもたらすか、その期待のため、あえて亡くなられたお二人に堀内氏の1950年代の作品を、加えて発表する所以であります。

 しかし、これは画廊主の独断であって、堀内が個展をすることはなかった。このとき私も堀内氏とお会いし、話をすることができたのだったが、穏やかな印象の人だった。その時にDMに取り上げられたのが、下記の「静物」という1954年に描かれた10号くらいの作品である。

 ポルトリブレのコレクション展に並べられたのは、「花」という20号くらいの作品。ちょっとビュッフェを思わせる。

 画家の一人がこの絵を見て、ビュッフェはこのようなシンメトリーな作品は描かなかったと言った。ビュッフェとの違いを出したかったじゃないか。もう一人の画家が、これは女体を描いていると思うと言った。なるほど正にそうだ。花の茎が股や足を表している。真ん中で切られている茎は女性器を表しているのだろう。
 未亡人も参加していて、家には堀内の作品が30点以上残っているという。どこかの画廊が遺作展を企画してくれないだろうか。そして美術館が「実在者」展を取り上げてくれないだろうか。
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「作家&コレクター 自慢のコレクション展VIII」
2012年4月6日(金)−4月16日(月)
12:00−20:00(最終日17:00まで、11日休廊)
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ポルトリブレ
東京都新宿区新宿2-12-9 広洋舎ビル3階
電話03-3341-2992
http://www2.tbb.t-com.ne.jp/portolibre/