さわだともこの変身

 雑誌『月刊 たくさんのふしぎ』2011年12月号は「これ、わたし」と題された美術家さわだともこのセルフポートレート集だ。1ページに1枚の顔写真が載っている。すべてさわだ本人の顔でメーキャップが変えられている。さわだについて、巻末に紹介の文がある。

1977年神戸生まれ、成安造形大学写真クラス研究生を修了、現在は同大学客員教授。デビュー作「ID400」にて2000年キャノン写真新世紀特別賞、2004年には木村伊兵衛写真賞などを受賞。(後略)

 作者のことばから、

(前略)内面と外面の関係を大きなテーマとして、その二つが複雑に影響しあう関係性についての思いや考え、疑問を作品という形にして制作を続けて今年で15年になります。例えば、私という人間は同じなのに私の外見が変わることで、私への反応が変わる。そういった外見と内面の関係性は、何千枚の「わたし」を撮り続けた今もかわらず、私にとってはとても魅力的でとても不思議なことです。(後略)






 この『月刊 たくさんのふしぎ』は幼稚園向けの雑誌なので、ふつうなかなか目にする機会がない。でもときどき大人にも十分面白い企画が立てられているのだ。
「作者のことば」を別にして、本文にある文章は以下のようにたった5行だけ。幼稚園児向けとはいえ、何とも潔い。

これ、わたし
これも、わたし
わたし
わたし
み〜んなわたし

 美術史上の系譜をたどると、シンディ・シャーマン森村泰昌、さわだともこ、となるのだろうか。さわだの方が森村よりも好ましい。


月刊 たくさんのふしぎ 2011年 12月号 [雑誌]

月刊 たくさんのふしぎ 2011年 12月号 [雑誌]