巷房で開かれている立原真理子展が興味深い


 銀座1丁目のギャラリー巷房2と同階段下で開かれている立原真理子展が興味深い(4月7日まで)。立原は1982年生まれ、2006年に女子美術大学芸術学部洋画専攻を卒業し、2008年に東京芸術大学大学院美術研究科修士課程を修了している。2008年に銀座のフタバ画廊で初個展を開いている。



 まず「巷房2」の展示を見る。空間内に2枚の網戸が設置されている。壁面には絵画作品が展示されている。山を描いた風景画に赤い色が塗られている。網戸も一部が赤く塗られている。作家によれば赤いのは網戸に刺繍しているのだという。網戸は実際に使われていたもの。




 ついで、「巷房階段下」の展示を見る。ここは地下にあるギャラリー巷房2へ降りてくる階段の下の空間を展示室としたもの。本来、物置としてしか使い道のない空間をあえてギャラリーとしている。非常に使いづらい空間で、今まで成功した展示は作間敏宏のインスタレーションくらいのように思う。
 立原は、この空間の入口にも網戸を立て、中へ入れないようにし、さらに網戸に付けた赤い刺繍も面積を広くして、網戸の網ともども内部の空間を見えづらくしている。その内側には彼岸花の立体がたくさん床に立てられている。刺繍された網戸の上や下から覗いてみた。彼岸花が奥まで続いているように見える。
 彼岸花曼珠沙華マンジュシャゲ)は秋に鮮やかな赤い花を咲かせるが、実は有毒植物だ。地下の鱗茎には毒がある。しかし飢饉の時は毒抜きをして食べたという救荒植物でもある。
 むかし山口百恵が『曼珠沙華(マンジュシャカ)』という歌を歌っていた。

マンジューシャカ 恋する女は
マンジューシャカ 罪作り
白い花さえ 真紅に染める

 作家がどこまで意識しているのかは分からないが、階段下の薄暗い空間に広がるのは激しく暗い情念のようなものだ。それはまた刺繍された網戸で抑制/抑圧されているが。彼岸花の赤は、階段下の空間を出て、巷房2の網戸にも絡まり、平面作品の風景画にも浸透していく。使いづらい階段下の空間をうまく使って作間敏宏と同様に成功していると思った。
 立原はふだん現代美術を専門にしている画廊でスタッフとして働いている。ずっとmodestyな女性だと思っていたので、作品の印象との大きな齟齬に驚かされた。
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立原真理子展「岸と戸」
2012年4月2日(月)〜4月7日(土)
12:00〜19:00(最終日〜17:00)
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巷房2・階段下
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル地下1階
電話03-3567-8727
http://www5.ocn.ne.jp/~kobo/