藍画廊の立原真理子展を見る

 東京銀座の藍画廊で立原真理子展が開かれている(1月18日まで)。立原は1982年茨城県生まれ、2006年に女子美術大学芸術学部洋画専攻を卒業し、2008年に東京芸術大学大学院美術研究科修士課程を修了している。2007年に銀座のフタバ画廊で初個展を開き、その後2012年に巷房2と階段下で、2013年に藍画廊、2014年にHasu no hanaと藍画廊、2015年にPicaresqueギャラリーで個展を開いている。

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 ギャラリーの真ん中に蚊帳が吊られている。その蚊帳に刺繍が施されている。今まで立原は刺繍という方法で絵を描いてきた。その支持体にはしばしば網戸が使われてきた。Hasu no hanaでも今回も蚊帳が選ばれたている。蚊帳も網戸と共通の性質を持っている。内と外を分け、網戸/蚊帳に描いた図と重ねてその先の風景を借景のように見せることができる。作品に強引に現実の空間を重ね合わせている。いや借景というより立原の意図は、現実空間の中に作品を成立させることなのではないか。作品を取り囲む現実空間も取り込んだものを併せて「作品」としているのではないか。
 この蚊帳は一端が開いていて、中の空間に入ることができる。刺繍された図柄を内と外から見ることができる。画廊主に聞いたら、本当の刺繍は表面からのみ見るようにできていて、裏面は糸が複雑に絡み合って鑑賞を前提としていないが、立原の作品は表裏を見るようになっている。刺繍の方法を使っているが刺繍とは別物の由。
 蚊帳を使ったインスタレーションで、立原は蚊帳で空間を分断しつつ分断された空間を重ね合わせるのに利用している。歌麿などの浮世絵でも蚊帳は向こうの景色を半ば透かし見せて空間の重ね合わせを行っていた。現代美術の立原と歌麿が通底している。
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立原真理子展
2020年1月6日(月)―1月18日(土)
11:30-19:00(最終日18:00まで)
1/12(日)、1/13(月・祝)休廊
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藍画廊
東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル3階
電話03-3567-8777
http://igallery.sakura.ne.jp/