若い頃、もう30年以上前になるが、横浜で屋台をしていた。夜、屋台でラーメンを作って売っていたのだ。これはテキ屋の仕事で、大元に組長がいた。その下に代貸しがいて、代貸しが屋台の組織を仕切っていた。その下にわれわれがオヤジと呼んでいた直接の責任者がいた。代貸しとオヤジとの金銭的な関係は知らなかった。
屋台は代貸しの所有になっていたと思う。毎日オヤジがわれわれ若い衆のところにラーメンの素材を持ってきた。麺、鶏や豚の骨(トリガラ、トンガラ)、豚の腹脂や牛の背脂、特製のタレ、チャーシュー、メンマ、ネギ、ニンニク、ショウガ、卵、割り箸、化学調味料などだった。鶏ガラや豚ガラを煮込んでスープを作るのはわれわれだった。
あるとき材料の中に豚足が入っていた。スープをとるためだ。豚足の扱いが分からないので、そのままスープに入れて煮込んだ。どんな味がしたかもう憶えていない。
後日、豚足を使うときは脚の毛を火で焼き、爪の間の糞をきれいに洗ってからスープに入れるのだと誰かに言われた。知らなかった。焼きもせず、洗いもしないで、そのまま釜に入れて煮込んでいた。まあ、私も同じ釜のスープで作ったラーメンを一晩に2杯ずつ食べていたし、完全に煮沸消毒していたので許してもらおう。30年以上前になるし。
そんな話を若い女性に話すと、まあ! ウンチって食べられるんですか? と驚かれた。いえ、ウンチは食べられませんと答えたが、後日食べられることを思い出した。やはり中国の話だ。茶に関する本を読んでいたら、中国では虫の糞をお茶にして飲むと書かれていた。茶の葉だけを食べる虫がいて、その虫の糞を集めて乾燥させ、茶葉と同じように湯を注いで飲むのだという。それを読んだあと、知人がこんなお茶があるんだと少し分けてくれたのが、正に虫の糞のお茶だった。早速飲んでみたが、もらった糞茶の量が少なかったのか、特に印象に残る味ではなかった。
だから、糞を食べることはできるのだ。残念ながら、糞茶の名前もそのことを紹介した茶の本の題名も忘れてしまった。誰か知っていたら教えてほしい。