東京銀座のギャラリーQで李晶玉展「前景」が開かれている(8月2日まで)。李晶玉は1991年東京都生まれ、2018年に朝鮮大学校研究院総合研究科美術専攻課程を修了している。2018年にeitoeikoで初個展、ギャラリーQでは4回目、ほかに原爆の図丸木美術館でも個展を行っている。
今展は毎年恒例の、銀座の画廊8軒が共同で行っている「画廊からの発言 新世代への視点2025」という、各画廊が推薦する若手作家を紹介する企画の一環だ。ギャラリーQはこの李晶玉を選んでいる。
パンフレットの李の言葉、
展示タイトルの『前景』は「comic foreground」から取っており、これは観光地などに見られる記念写真用の看板状の物体「顔はめパネル」の英名である。
今回出品する神話シリーズやその他の作品では、作者のルーツにまつわるいくつかの国家の神話や歴史の場面の象徴的なシーンに、作者の顔をはめるような手法で絵画を制作している。生々しい個人が象徴的な記号に収まっている違和感、一方で共同体と一体化する陶酔や熱狂の起こす矛盾に興味がある。





在日朝鮮人3世という複雑な立ち位置は、李に自分の存在について深い思考を強いてきただろう。それが彼女の作品を優れて強い表現に到達させている。無反省の幸福な人生は優れた作品とは無関係だろう。
同時に李のすぐれた描写力、造形力が見事な作品を結実させている。
以前、原爆の図美術館の学芸員岡村幸宜が雑誌『図書』に優れた李晶玉論を書いていた(2022年6月号)。
なお、川崎市岡本太郎美術館の「戦後80年≪明日の神話≫次世代につなぐ原爆×芸術」展にも出品し、9月7日には李晶玉によるトークイベントも予定されているという。
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李晶玉展「前景」
2025年7月21日(月)-8月2日(土)
11:00-19:00(最終日17:00まで)日曜休廊
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ギャラリーQ
東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F
電話03-3535-2524