TIME & STYLE MIDTOWNの高柳恵里「自明」を見る

 東京六本木のミッドタウン ガレリア3階にあるインテリアショップTIME & STYLE MIDTOWNで高柳恵里「自明」が開かれている(12月21日まで)。高柳は1962年神奈川県生まれ。1988年に多摩美術大学大学院美術研究科を修了し、1990−1991年イタリア政府給費留学生としてミラノ国立美術学院に留学している。
ここTIME & STYLE MIDTOWNはおしゃれなインテリアショップで店内はかなり広い。ざっと見まわしたが、どれが展示品か分からない。スタッフに高柳さんを見に来たんですがと声をかけると、A3判の印刷された紙を2枚渡された。1枚は店内の配置図で高柳の作品がどこに設置してあるか詳しく記してある。もう1枚には個々の作品の解説が書かれている。
 その一部を写してみる。

インテリアショップでの展示について。


日常的に体験している、実生活と、生活のなかでのデザインへの嗜好とのずれ、インテリアショップ内で起きている演出、そしてイメージや願望を抱くこと、などは現実とどう絡み合うのか。


さて、ここに点在する作品は、どこに位置するものとなるのでしょうか。実用品と非実用品、商品と展示物、使っているのか、使っていないのか。ここにあるいずれのものにも当てはまるとも言えます。この空間のなかで異質な目を引く存在であるとしても、心地よく馴染んでいるとしても、美しい空間が出来上がっているとしても、それは疑似的な出来事かもしれません。(中略)


インテリアショップのなかで、全ての事物が分離して、そして、そこにあるはずの明らかな差異が際立つこと。
作品の有り様は、物事のそれぞれと親密になる一つのきっかけとなるような気もしています。

 展示の配置図を見ながら店内を探して歩き回る。まず入口近くのテーブルに「黒土」が置いてある。園芸店で売っている家庭園芸用のビニールに入った黒土だ。2袋あって、開封されているものと未開封のもの。黒土がテーブルの上に置かれているのは違和感がある。

(写真撮影は許可されなかったので、この写真は店のHPから借用したもの)。
 その横の棚の上に空のガラスコップが置かれている。これについて、

「飲みさしのコップの水はどこに置けるのだろうか」


飲み物を飲んでいる途中に、持っているコップをふと置くことはよくある出来事です。
さてここで、私は、飲みさしのコップの水をどこに置くのでしょうか。
この作品は、展示を考えることについての疑念から始まっています。

 その近くには、三脚にセットされたカメラ、棚に置かれた筆、新品の靴と古い靴、ポツンと置かれた台車。
 また別の棚には、「糸をも」「藁をも」「接地面」と名づけられた小さな作品が置かれている。「糸をも」「藁をも」については、

藁をも掴む、と言いますが、強いのはどちらか、弱いのはどちらか、思えば思うほどどちらとも言えません。
糸くずも、細い針金も、ティッシュもまた…。

 同じく「接地面」について。これはビニールと紙と接着剤でできている。

面と面の連結が意識されている作品。
ささやかな物体の、ささやかな所に、言って見れば大袈裟に「面」を感じ、そこが着地する様子を吟味するようにして出来上がった作品です。
着地するほうも、される方も、強固な状態ではないし、どちらがどちらに着地しているとも言えない状況です。

 ほかに「紙袋」とか「ガラス壺」とか。「紙袋」は実際の紙袋だし、「ガラス壺」は伏せたガラス壺を撮影した写真をインクジェットプリントし額装して壁に展示している。
 いずれもデュシャンのレディーメイド作品同様に、作家がこれが自分の作品だと言明することで作品化している。店内を配置図を見ながら作品を探し回るのは意外にも楽しかった。スタッフに訊ねると高柳の作品を目当てに来る客は1日に2人くらいだと。勿体ない。

 作品の店内配置図(一部)
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高柳恵里「自明」
2018年11月19日(月)−12月21日(金)
11:00−21:00(無休)
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TIME & STYLE MIDTOWN
東京都港区赤坂9−7−4 東京ミッドタウン3階
電話03-5413-3501
http://www.timeandstyle.com
サントリー美術館と同じフロア