堀江敏幸『ゼラニウム』(朝日新聞社)を読む。先輩からこの人の文章は良いよと言っていただいたもの。堀江を読むのは初めてじゃないだろうか。頂いたのは半年前になるが、どうしても返却期限がある借りた本が先になって、また自分で購入した本ほどの動機も少なくて半年もたってしまった。
2000年前後ごろに書かれた6つの短篇からなっている。最後の1篇を除いてフランスが舞台で、その日本が舞台の「梟の館」も主人公以外は旅行などで日本に短期滞在しているような外人娘たちだ。堀江はフランスに留学していた経験があるようだから、舞台をフランスにしているのか。初めて読む堀江の小説はフランス文学の味わいがした。どこが? 少なくとも『ニューヨーカー』に掲載されるようなちょっと捻ったこじゃれた雰囲気のものとは違う。堀江をフランス文学風と感じたのは、あるいは野見山暁治の『四百字のデッサン』を思い出したせいかもしれない。野見山もフランスに留学して長かった。堀江も野見山も事件というかエピソードを最後まで書かない。結論が近づいたところでふっと終わりにしてしまう。読者はちょっと(だけ)置いてきぼりにされてしまう。その先をもう少し詳しく知りたいのにと思うところで終わっている。
どの短篇も楽しめた。十分楽しんだ。息の長い文章も違和感がなかった。良い作家を知ったと思う。実は私はあまり小説を読まないので作家には疎いのだ。Mさん、良い本をありがとうございました。
- 作者: 堀江敏幸
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2010/09/22
- メディア: 文庫
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