浦久俊彦『138億年の音楽史』を読む

 浦久俊彦『138億年の音楽史』(講談社現代新書)を読む。タイトル通りの奇妙な本。ビッグバンから138億年が経っていることからこの題名がある。ビッグバン直後にも音はあっただろうから、音楽の物語は宇宙の誕生までさかのぼれるのではないか。そんなところから始めて、ピュタゴラスが発見したという弦の長さと音程の関係、プトレマイオスからケプラーまで音楽と天文学の関係が述べられる。
 ついで古代の音楽が語られる。そこからグレゴリア聖歌へ移り、凍れる音楽としてゴシック建築が話題となる。そして政治と音楽、権力と音楽、理性や感情との関係が考察され、末尾2割くらいになってようやくクラシック音楽が登場する。つぎが大衆音楽で、その後「自然という音楽」という章がくる。鳥やクジラが作曲しているという話になる。フタスジモズモドキは75曲、ハシナガヌマミソサザイは100曲以上もの歌を作曲することさえあるという。
 これは何という本なのだろう。社会から見た音楽でもないし、根源的な音楽論でもないし、究極の音楽史でもない。音楽の新しい定義といったものにしては曖昧なままだし。
 変な題名はおそらく編集者が苦肉の策で付けたのだろう。内容を正確に表した題名だったら売れないだろう。それでこんな竜頭蛇尾みたいな題名なのだ。私だってこんな内容の本だと分かっていたら買わなかった。しかしたくさんの文献にあたってよく調べて書いている。巻末の参考文献は日本語と外国語別で34ページもあり、挙げられた文献の数は日本語のものだけで400冊近くになっている。
 まあ、そこそこ面白く読んだのだったけれど・・・

138億年の音楽史 (講談社現代新書)

138億年の音楽史 (講談社現代新書)