なびす画廊の瀧田亜子展を見る

 東京銀座のなびす画廊で瀧田亜子展が開かれている(11月28日まで)。瀧田は1972年東京都生まれ。なびす画廊での個展は今年の4月に続いて今回で19回目になる。最近は春秋と年に2回も個展を行っていて、作品は紙に顔料で描いている。瀧田は昔から書を学び、そのため中国に留学してもいる。絵画に転じた後も、書を通して身につけた「線」を表現の核にして作品を作ってきた。書と西洋絵画を融合した瀧田の仕事は独特の世界を見せている。
 今回も8枚のパネルで構成された大作が1点、6枚のパネルで構成された大作が2点、そしてやや小さな作品を1点展示している。今まで明瞭な形が描かれることがなかったのに、ここに掲載した写真のように今回はっきりした形が描かれている。あるいは色面が広がっていたり縞が描かれたりしている。瀧田にしては大きな変化だ。




 たしかに初期には樹木を思わせるような形が描かれていたが、しだいにそのような要素は影をひそめ、ここ何年も単純な形態を繰り返す画面を作っていた。どこかミニマル・アートと姻戚関係にある傾向の作品だった。それと比べれば今回驚くような変化を見せている。一見マーク・ロスコを思わせる面も否定はできないが、ロスコに直接向かっているというよりは、楕円を描いて太陽を回る彗星の軌道のような接近を思わせる。もしかするとロスコやバーネット・ニューマンに近いところで新しい展開を目指しているのだろうか。そう思いながらも、緑色の大きな十字に注目すれば別の展開を示しているのではないかとも想像される。もう一度、形を重視する方向で仕事をしてみせてくれれば面白いと思うのだけれど、さて。
 半年後の来春の個展が愉しみになってきた。
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瀧田亜子展
2015年11月23日(月・祝)−11月28日(土)
11:30−19:00(土曜 17:00まで)
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なびす画廊
東京都中央区銀座1-5-2 ギンザファーストビル3F
電話03-3561-3544
http://www.nabis-g.com