hpgrpギャラリー東京の窪田美樹展

 東京渋谷区表参道のhpgrpギャラリー東京で窪田美樹展が開かれている(9月19日まで)。窪田は1975年、神奈川県生まれ。2001年に武蔵野美術大学大学院彫刻コースを終了している。
 私は彼女の2回目の個展、フタバ画廊でのそれを見て強烈な印象を持った。応接セットに使われる独り掛け用の革張りのソファーが2脚、二つ巴のように向かい合わせに重ねられ、それがモルタルで固められていた。続いて早稲田にあったガルリSOLでもモルタルを使って家具を塗り込めた不思議な立体を展示していた。吉祥寺にあったギャラリーαMでの展示は少し納得がいかなかった。しかし、その後の大田区久が原のガレリアキマイラの個展、かわさきIBM市民ギャラリーの個展はすばらしかった。
 窪田は府中ビエンナーレにも取り上げられ、資生堂eggにも選ばれてメジャーへの道を歩んでいく。この頃は古い家具をスライスし、断面を磨き上げ、使われた家具という来歴を消さないまま、それをオブジェに仕立てていくという仕事をしていた。一昨年に行われた第1回所沢ビエンナーレ「引込線」で窪田は新しい展開を見せた。パソコンでプリントアウトした大量の写真を自動車に貼り付けた立体作品を出品したのだ。
 今回hpgrpギャラリー東京の個展で展示されているのも所沢ビエンナーレの延長線上の作品だ。「人の山」は人が印刷されている紙を丸めて木の土台に貼り付けているようだ。左右と奥行きが2mと1.5m、高さが1.23mある。「火柱」は炎を撮影した写真をプリントアウトし、それを高さ2.5mの柱状にしたもの。「シート」は布でできた棒状のものをプリントアウトした紙で巻いている。「絵画空間」は高さ25cmの小品で、マチスの絵画をプリントアウトし、それを丸めて人物の形にしたものらしい。
 窪田美樹のテキストから、

見る事で衝動的に起る感覚というのは、何に由来しているのだろうか。例えば、初めて見るから驚くと言うが、実際感情は既存の記憶になぞらえて動く物ではないか。既に知っている何かと重なる、だから驚く、怖がる、面白がる。見る行為と感情の間に、対象だけでなく別の何かがあるとするなら、一体何を見ているのか。あるように見える事と、実際にある事の違いに興味を持っている。「虚像で実像を作る」という言葉をイメージして、紙に焼かれた写真や絵画のコピーを握りつぶして形を与える。写真や絵画におさめられた空間を素材として彫刻作品を制作する。

 窪田の作品を10年以上見てきたが、最近の作品がよく分からない。もう一度、フタバやキマイラ、かわさきIBMのようなシュールリアリスティックな立体作品を見たいと言うのは、先へ先へと進んでいく作家からはるか後ろに取り残されて、息を切らして作家を追いかけているファンの戯れ言か。


人の山

火柱

シート

絵画空間
       ・
窪田美樹展「人の山」
2011年8月26日(金)ー9月19日(月祝)
11:00−19:30
月曜日休廊(最終日9月19日は祝日のため開廊)
       ・
hpgrpギャラリー東京
東京都渋谷区神宮前5-1-15 CHビルB1F
電話03-3797-1507
http://www.artdiv-hpf.com/tokyo