組版の法則ーー冒頭の1字落とし

 昔の日本の出版では改行もなかったし文章の冒頭の1字落としもなかった。句読点すらなかった。それらはすべて欧米の組版の方法を取り入れたものだ。段落ごとに改行し、改行した後は1字落とす。
 活版の時代に組版について細かな約束ができあがった。ただ曖昧な点もあった。改行した後の文章の冒頭の1字落としだが、カギ括弧(「)で始まる場合、1字落とし、半角落とし、1字も落とさないの3つの方法があった。過去の組版を見ると書籍によっていずれかを選択している。その後写植の時代になってそれらが曖昧になり、現在のDTPでさらにいい加減になってきているが。
 さて、ここ何年か、いや10年以上かもしれないが、不思議な組み方を見かけるようになった。最初の段落の冒頭のみ1字も落とさなく、改行の次の行の冒頭は1字落とすというもの。ちょっとおしゃれな雑誌やカタログに採用されている。この組み方の根拠というかモトは何だろう? 私の知らない方法だ。(下の写真参照)

 写植の時代になって、活版では決してできなかった「詰め打ち」が登場した。字間を詰めるやり方だ。それに対してリクルートコスモスのPR誌が全ページ字間を空ける組み方を採用した。たしかに目新しかったが、読みづらくもあった。ただページが白っぽくてそれなりの効果はあったようだ。