電車のなかの面白い女性二人組

 サラリーマンだった頃いつも同じ時刻の同じ電車の扉から乗って通勤していた。満員電車だったがいつも面白い若い二人の女性と一緒だった。彼女たちは私が乗るときにすでに乗って来ていた。そして降りる駅も私と一緒で、ある時昼時に二人と近所のコンビニで会ったから勤務先も近かったようだ。
 なぜ満員電車の中で毎日彼女たちが乗っていることが分かったかと言えば、いつも大きな声で面白いことを話しているのが聞こえたからだ。

 あ、大変! 机の上に日記出しっぱなしにしてきちゃった。日記にはあの漢字2文字書いてある? ううん、書いてない。じゃあ、大丈夫よ。

 やらしいおじさんとしては、この2文字は「中絶」かなと思ってしまう。

 おはぎってお彼岸に食べるよね、お彼岸ていつだっけ? 12月頃じゃなかった? 私はね、お正月だと思うけど。

 いつも笑うのをこらえていた。さて、彼女たちはおそらく別々の駅から乗っていたのだろう。そのことは二人がいつも同じ時間の同じ車輛の同じ扉近くに乗っていたことから推測できる。違う駅から乗っていたからこのような行動をとっていたに違いない。もし同じ駅から乗っていたら、乗る電車の時間も、乗る場所も毎日同じことはあり得ないのではないか。
 彼女たちはまもなく大きな声で話すのをやめ、半年くらいで電車のなかに見なくなった。多分会社も辞めてしまったのだろう。あのキャラクターだったらOLとしてはストレスも多かったのだろう。