東京都現代美術館の「MOTコレクション:コレクションを巻き戻す2nd」を見る

 東京木場公園東京都現代美術館で「MOTコレクション:コレクションを巻き戻す2nd」という名の常設展が開かれている(10月16日まで)。これがとても充実していて見応えがあった。残念ながら作品の撮影が禁止されていたので、画像は紹介できない。

 遠藤利克の「泉」という木の大きな円筒を焼いた作品が圧倒する。2017年の埼玉県立近代美術館の個展で見て以来だが、何度見ても素晴らしい。直径95cm、長さはほぼ20mもある。中心を繰り抜いて空洞とし、さらに黒く焼いて炭化させていることで、もの派からの超越が顕著に示されている。

遠藤利克「泉」

 菊畑茂久馬の「奴隷系図」も面白い。九州派の中心作家だが、この作品だけが郡を抜いている。電柱のような2本の木柱に5円玉をいっぱい貼り付けて、1本は男性、もう1本は女性を表している。異様な造形でその存在感は半端なものではない。

菊畑茂久馬「奴隷系図

 リキテンスタインの「ヘアリボンの少女」は購入時5億円したことが高すぎるとマスコミで評判になったもの。今となっては安かったのではないか。この納入を巡って細見画廊の社長が、美術品商の観察を持っていなかったことがマスコミで叩かれたのだった。

リキテンスタイン「ヘアリボンの少女」

 菅木志雄の「界の仕切り」。丸太を左右6m奥行き2.5mの広さに組み合わせ、領界を出現させている。40年前の作品で興味深いが、最近の菅のオブジェはあまり面白くない。

 三木富雄の耳の彫刻「EAR」、アルミ合金で高さ170mもある。三木は暇があればいつもいつも耳の彫刻を磨いていたという。

 中村宏「円環列車A(望遠鏡列車)」。列車には修学旅行中の女学生たちが乗っていて、彼女たちはみな一つ目だ。中村は23歳で代表作「砂川五番」を描いた天才画家だ。

中村宏「円環列車」

 ほかにも工藤哲巳の紐の結び目が増殖している立体作品や、高松次郎の影の作品「扉の影」、小島信明の男が星条旗に似た赤白ストライプの布をかぶっている立体作品。これは教科書に載っていた。リチャード・ロングの長方形のスレートを床に並べて同心円とした作品、笠原恵美子の「石の花」というオブジェ、これは人間の胎児の段階で性器が女性と男性に分かれていく様子を大理石の作品としたものだという。昔ルナミ画廊で見た記憶がある。中西夏之の洗濯バサミの作品も何度見ても興味深い。

リチャード・ロング

工藤哲巳

高松次郎「扉の影」


 東京国立近代美術館の常設展と比べて、平面作品より立体作品が充実している印象だった。「近代」と「現代」の違いだろうか。

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MOTコレクション:コレクションを巻き戻す2nd」

2022年7月16日(土)―10月16日(日)

10:00-18:00(月曜日休館)

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東京都現代美術館

東京都江東区三好4-1-1

ハローダイヤル0050-5541-8600

http://www.mot-art-museum.jp