東京都現代美術館の「MOTアニュアル2022」を見る

 東京木場公園東京都現代美術館で「MOTアニュアル2022:私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」が開かれている(10月16日まで)。参加作家は、高橋和也、工藤春香、大久保あり、良知暁の4人。作家たちについて、美術館のホームページでの紹介、

 

高川和也は、ラッパーのFUNIをはじめとする複数人の協力者のもと、自身がラップに挑戦する新作映像を制作中です。人間が感情を言葉で表した時、何を得ているのか、あるいは失っているのか。アーティスト自身の体験を記録したセルフドキュメンタリーとなります。

工藤春香は、これまでの作品で扱ってきた旧優生保護法や相模原殺傷事件を基底に、現在、障害者支援施設を出て自立生活をする方への取材を交えた新作インスタレーションを行います。子育てをしながらアーティスト活動を続ける自身を含む、女性たちの歴史についての考察も重なります。

大久保ありは、過去の13の作品をモチーフにしたインスタレーションで、複数の物語と時間軸が交差する新たな物語を編纂します。自身の過去の作品を再構成することで、時間の組み換えや、語りの主体と客体の入れ替わりにより、ある記述には常に別の物語の可能性が内包されることを伝えます。

良知暁は、2020年に10年ぶりとなる個展で発表した、1960年代にアメリカ、ルイジアナ州で行われた投票権をめぐるリテラシーテストで使われた一節を軸とする作品を展示します。読み書き発音などが恣意的な判別の装置として、目に見えない形で行われる差別をめぐる思索である本作を、美術館という公共空間で再現する試みです。

 

 私には高橋和也以外あまり面白くなかった。その高橋について、同じくホームページより、

 

高橋は1986年生まれ。東京造形大学造形学部美術学科卒業。東京藝術大学大学院修士課程修了。2007年より国内外のグループ展、レジデンス等に参加。映像による制作を行っている。これまでに、高川自身になりきった心理カウンセラーとの対話や、見知らぬ人同士の合意形成を行う様子を捉えた実証実験的な映像やプロジェクトがある。鬱病患者や戦争体験者の言葉の収集を行うなど、言葉が人の心理に与える影響に関心を持っている。高川の新作は、ラッパーのFUNIらと協働し、言葉によって自分自身を表現することと、それによる作用について探るドキュメンタリーとなる予定である。

 

 高橋は以前から書いている日記を、ラッパーのFUNIの力を借りてラップに変換しようと試みる。FUNIが高橋の言葉にリズムをつけ声の出し方を指導し、だんだんとラップぽくなっていく。しかし素人のラップなので、そのラップ自体は面白くない。途中、挿入されるプロらしいラッパーのSSAADNのストリートで歌われるラップは見事だ。映像は特に劇的なことはなく、淡々と進んでいく。

 高橋の映像作品が終ったとき、50分以上が経っていた。そんなに長時間視聴していたことが嘘のような集中していた時間だった。少しもドラマチックな内容ではないのに、退屈しなかった。

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MOTアニュアル2022:私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ」

2022年7月16日(土)―10月16日(日)

10:00―18:00(月曜日休館)

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東京都現代美術館

東京都江東区三好4-1-1

ハローダイヤル0050-5541-8600

http://www.mot-art-museum.jp