日雇い土方は平等だった

 若い頃飯場に入って土方をしていたが、その前に立ちんぼをしていた。立ちんぼも土方で、日雇い土方の別名なのだ。私が行っていたのは東京新宿区は高田馬場にあるヤマだった。仕事をしたい人間と仕事の手配師が集まる場所をヤマと言う。渋谷にも山谷にもあった。ほかにもあちこちにあったようだ。早朝ヤマへ行って手配師に声をかけられるのを待ち、その日限りの土方仕事をして夕方日払いの現金をもらう。立って声をかけられるのを待っているから立ちんぼ。その日限りの仕事だから、現場では監督を除いて皆対等だった。年配者も若いのも平等だ。みなタメ口だった。こんな経験はこの日雇い仕事でしかなかった。心地いい経験だった。正反対なのが水商売だった。1日早く入社すれば先輩で、上下の関係がとても厳しかった。
 こんなことを思い出したのは横浜逍遙亭のブログを読んだからだ。
 横浜逍遙亭10月26日「社内メールの敬称」
 http://d.hatena.ne.jp/taknakayama/20071026
 心地良かった。だけど、それは例外だ。普通このような状況はない。必ず上下関係は存在する。そしてそのこと自体は悪いことではない。しかし絶対の平等関係の心地よさは40年経った今も忘れない。