音楽

藤岡靖洋「コルトレーン」が文句なくすばらしい!

藤岡靖洋「コルトレーン」(岩波新書)を読む。副題が「ジャズの殉教者」。コルトレーンの来日公演から始まるが、言葉が弾んでいるかのようだ。著者の高まりが真っ直ぐに伝わってくる。コルトレーンへの深い愛情がよく分かる。コルトレーンの詳細な伝記が綴…

岡本太郎美術館の池田龍雄展「アヴァンギャルドの軌跡」とモートン・フェルドマン

川崎市生田緑地にある岡本太郎美術館で池田龍雄展「アヴァンギャルドの軌跡」が開かれている(1月9日まで)。 池田龍雄は1928年生まれ、終戦間際に予科練へ行っている。岡本太郎美術館へは初めて行った。小田急の向ヶ丘遊園駅から公式には徒歩17分とある。…

斎藤憐の音楽劇「アメリカン・ラプソディ」

斎藤憐・作の音楽劇「アメリカン・ラプソディ」を座・高円寺という劇場で見た。演出が佐藤信、出演が高橋長英と関谷春子、ガーシュイン役で終始ピアノを弾いていたのがジャズピアニストの佐藤允彦だった。つまりこの芝居はガーシュインを描いたもの。ガーシ…

芥川作曲賞公開審査のVサイン事件

サントリー芸術財団主催の「サマーフェスティバル2010」で、芥川作曲賞創設20周年記念として、過去19年間の受賞者20人の作品がガラ・コンサートとして演奏される予定だった。昨日書いた理由で、実際には19人の作品が演奏されたが、演奏会で配布されたパンフ…

作曲家夏田昌和のこと

8月に入ってからだったと思う。作曲家の夏田昌和が覚醒剤を所持していた容疑で逮捕された。自宅の古いビデオデッキに隠していたという。夏田から覚醒剤を譲り受けた無職の女性から捜査が入ったようだ。 夏田は1968年東京生まれ、2002年に芥川作曲賞を受賞し…

三浦友理枝ピアノ・リサイタルのチケットが完売

9月7日に開かれる三浦友理枝ピアノ・リサイタルのチケットが半月以上前に完売してしまった。このリサイタルは「バッハからコンテンポラリーへ」というシリーズの一つ。コンテンポラリー=現代音楽には客が付かないと思い込んでいたので、チケットを買うの…

武満徹の《系図(ファミリー・トゥリー)》という曲

武満徹が亡くなった後、小学館が武満徹全集を企画した。それを機に全集編集長の大原哲夫が武満に関係の深かった15人にインタビューし、まとめたものが「武満徹を語る 15の証言」(小学館)だ。15人は、横山勝也、小泉浩、今井信子、篠田正浩、宇野一朗、池辺…

吉田秀和の小林秀雄批判

「小林秀雄のモーツァルト論について書く吉田秀和」(2010年5月9日)に続いて再び吉田秀和による小林秀雄批判を「之を楽しむ者に如かず」(新潮社)から紹介する。 これまでも書いたことだが、小林秀雄のあの評論(?)(=小林秀雄の『モーツァルト』)は…

小林秀雄のモーツァルト論について書く吉田秀和

吉田秀和の「之を楽しむ者に如かず」(新潮社)を楽しみながら少しずつ読んでいる。そこに次のような一節があった。 昔、小林秀雄が『モーツァルト』を書いたとき、それを読んだ多くの日本人は強い衝撃を受けた。もちろん、あそこには、音楽学的検証にかかっ…

片山杜秀という音楽評論家

吉田秀和が「之を楽しむ者に如かず」(新潮社)で片山杜秀をほめている。その「音楽は、自由な野の鳥」から、 この間、私の記憶では、たしかプレトニョフだったかと思う−−そうではなくて、ほかの音楽家だったにしても、どうでもいいことなのだが−−が、東京の…

作曲家中田喜直の評伝「夏がくれば思い出す」

朝日新聞3月6日「be on saturday」の「歌の旅人」は中田喜直特集だった。中田は「夏の思い出」「ちいさい秋みつけた」「雪の降る街を」など誰でも知っている歌曲を作った作曲家。たくさんの歌曲や童謡のほかに何百もの小学校中学校高校などの校歌、合唱曲…

権代敦彦のピアノ曲「無常の鐘」

先月27日に杉並公会堂小ホールへ矢沢朋子ピアノ・ソロ(〜現代音楽への誘い〜)を聴きに行った。当日のプログラムは、ラヴェルの「夜のガスパール」から「絞首台」を演奏した他はすべて現代音楽だった。最初に委嘱作品で世界初演のヨハン・ヨハンソンの「題…

青柳いづみこ「翼のはえた指」−−弟子の書いた優れた評伝

青柳いづみこ「翼のはえた指」(白水社)は副題を「評伝 安川加壽子」という。著者青柳の師であるピアニストの評伝だ。1922年生まれの安川は、外交官だった父親について1歳少しで渡仏し、10歳でパリ音楽院に学び優秀な成績を収めたが、欧州大戦勃発直前に17…

青柳いづみこ「ピアニストが見たピアニスト」

青柳いづみこ「ピアニストが見たピアニスト」(中公文庫)がとても面白い。世界的なピアニストの評伝で、6人のピアニストが取り上げられている。リヒテル、ミケランジェリ、アルゲリッチ、フランソワ、バルビゼ、ハイドシェックだ。 青柳は時々リサイタルも…

作曲家の二つのタイプ

現代音楽の作曲家として高い評価を得ている吉松隆は慶應義塾大学の工学部に学んだ経歴を持ち、作曲は独学で学んでいる。その吉松の『クラシック音楽は「ミステリー」である』(講談社+α新書)に作曲家を二つのタイプに分けた章がある。 まず生まれながらの…

浅川マキ亡くなる

浅川マキが亡くなった。朝日新聞の記事から(2010年1月18日夕刊)。 情念のこもった独特の独特の歌唱スタイルで知られる歌手の浅川マキさんが死去した。67歳だった。公演のため滞在していた名古屋市のホテルで倒れているのが17日夜、見つかった。愛知県警中…

クルト・ワイルの歌曲の面白さ!

クルト・ワイルの歌曲が日本ではあんまり人気がないように思える。もったいない話だ。クルト・ワイルは戦前ドイツで活躍し、ナチスを逃れてアメリカに移住した。有名な「三文オペラ」は戯曲家ブレヒトとの共作のオペレッタ。アメリカでは「セプテンバー・ソ…

ヒュッシュでシューベルト《冬の旅》を聴く

吉田秀和「改めて、また満たされる喜び」(朝日新聞社)に「シューベルトの響き」と題する1995年に書かれた章がある。その途中から引用する。 (シューベルトの)《冬の旅》は気安くきける音楽ではない。私にとって《冬の旅》は、戦後間もなく、たしか帝国劇…

メニューヒン、天才児の行方

吉田秀和「改めて、また満たされる喜び−ー新・音楽展望1994−1996」(朝日新聞社)を読んだ。「音楽展望」のタイトルで朝日新聞に連載されたもの。吉田秀和を読むのはいつでも教えられることが多く楽しい。それは音楽に限らない。谷崎潤一郎の口述筆記をした…

一人のための向井山朋子ピアノリサイタル

いささか古い話だが、2004年にnca(日動画廊コンテンポラリーアート)が主催する向井山朋子ピアノリサイタル「For You」を聴いた。とても変わった企画で、観客たった一人のための演奏会だった。ただし一人あたり約10分ほどの演奏。料金が1,500円だった。客は…

IMAホールの佐藤允彦と高田みどり

1990年に佐藤允彦と高田みどりが「ルナ・クルーズ」という非常に興味深いアルバム(CD)を作った。そしてほぼそのメンバーで光が丘のIMAホールでライブ演奏を行った。それは本当に興奮するものだった。しかし演奏会場が不便なためか、もったいないことに会場…

名盤「CAT NAP」のCD化を強く希望する

あんたは本当に暗い歌が好きねえ。カミさんが少し軽蔑したように言った。もう30年以上前のことだ。浅川マキや内藤やす子、大友裕子を指している。一番好きだったのは山口百恵だったが、これについては何も言われなかった。浅川マキは当時の友人三木良吉に勧…

毎日新聞の吉田秀和特集がチョー嬉しい

毎日新聞2009年9月6日の書評ページが吉田秀和特集だ、嬉しい! 今月23日が吉田秀和の96回目! の誕生日で、それを記念した特集。まず「この人・この3冊」で丸谷才一が吉田秀和の著書3冊を選んでいる。 「モーツァルト」(講談社学術文庫) 「モーツァル…

中森明菜のSONGS、「悪女」を歌った

12日のNHK総合テレビ「SONGS」は中森明菜だった。スタジオで何曲か歌っていた。カバーアルバムがヒットしているそうで、今回歌ったのも中島みゆきの「悪女」、石川セリの「ダンスはうまく踊れない」、尾崎豊の「I love you」、ユーミンの「ベルベット・イー…

チケットが手に入らない

8月下旬は毎年恒例のサントリーホールのサマーフェスティバルが開かれる。現代音楽の連続演奏会だ。「音楽の現在」で世界の旬の作曲家を紹介し、「テーマ作曲家」で、一人の作曲家の作品を演奏する。そして最後に芥川作曲賞選考演奏会が開かれる。今年の「…

「音楽の聴き方」がすこぶる面白い

岡田暁生「音楽の聴き方ーー聴く型と趣味を語る言葉」(中公新書)がすこぶる面白い。主にクラシック音楽について言葉で語れとか言っている。内容をうまく要約できないが、目次から「音楽と共鳴するとき」「音楽を語る言葉を探す」「音楽を読む」「音楽はポ…

宮下誠さん逝去

昨日、私の昨年9月5日のエントリーにkoopopさんがコメントをくれて、宮下誠さんがこの5月に亡くなったと書かれている。知らなかった。ネットで検索するとLINDEN日記とMr.Mのブログに宮下誠さんは5月22日か23日に京都のホテルで心不全で亡くなったと書か…

モンポウから連想したこと

雑誌「考える人」春号に高橋悠治へのインタビュー「ピアニストになりたいと思ったことはなかった」が載っている。その中で高橋が昨年フォンテックからモンポウとブゾーニのCDを出したことについて聞かれている。高橋はモンポウの「沈黙の音楽(ひそやかな音…

片山杜秀「音盤考現学」が面白い

片山杜秀の「音盤考現学」(アルテスパブリッシング)を読んだ。著者はあの「近代日本の右翼思想」(講談社選書メチエ)を書いた人だ。 「音盤考現学」は雑誌「レコード芸術」に「傑作!? 問題作!?」というタイトルで連載されていていつも読んでいた。しかし…

猫のごはんの皿になりたい

浅生ハルミン「猫座の女の生活と意見」(晶文社)を読んでいたら、次のような一節があった。 もし生まれ変われるのなら猫ではなく、猫の舌に毎日舐められる猫のごはんの皿になりたいと妄想にあけくれる猫好きの私ですが、そんな魔法はこの世に存在するするわ…