岡田暁生「音楽の聴き方ーー聴く型と趣味を語る言葉」(中公新書)がすこぶる面白い。主にクラシック音楽について言葉で語れとか言っている。内容をうまく要約できないが、目次から「音楽と共鳴するとき」「音楽を語る言葉を探す」「音楽を読む」「音楽はポータブルか?」「アマチュアの勝利」とあり、さまざまなエピソードが紹介されてとにかく読んでいて楽しかった。
「おわりに」に「聴き上手へのマニュアル」が28条列挙されている。その中から一つ紹介する。
・音楽を言葉にすることを躊躇しない。そのためにも音楽を語る語彙を知ること。音楽を語ることは音楽を聴くことと同じくらい面白い。まずは指揮者のリハーサル風景の映像などを見てほしい。
そのリハーサル風景を紹介して、
リハーサル映像などを見ていて気づくのは、彼ら(指揮者たち)が時として(あるいは頻繁に)、それを耳にした途端こちらの身体の奥に特定の感覚が湧き上がってくるような、一風変わった喩えを口にすることである。いわく「40度くらいの熱で、ヴィブラートを思い切りかけて」(ムラヴィンスキー)、「いきなり握手するのではなく、まず相手の産毛に触れてから肌に到達する感じで」(クライバー)、「おしゃべりな婆さんたちが口論している調子で」(チェルビダッケ)等々。
巻末の文献ガイドが充実している。その中から1点、
こうした状況にあって、次々に発掘されてくる雑多な音楽作品を網羅的に視野に収め、しかも単なるそれらの情報整理に終わることなく、既成の批評文脈を大胆に組み換え、個々の作品をそこに位置づけ、新しい体系を構築するという大技をやってのけるのが、片山杜秀「音盤考現学」および「音盤博物誌」(アルテスパブリッシング)である。驚倒するほかない著者の博覧強記とあいまって、これは言葉の最良の意味での奇書とも呼ぶべき性格の本だが、21世紀の音楽批評の一つの出発点であると同時に、その最初に金字塔であると言って過言ではない。
片山杜秀「音盤考現学」が面白い(2009年4月12日)
この片山杜秀のすごいところは、専門が音楽ではないということだ。
片山杜秀「近代日本の右翼思想」(2008年4月24日)
- 作者: 岡田暁生
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