音楽

「チェチェンへ アレクサンドラの旅」

朝日新聞12月12日夕刊に映画評論家の山根貞男が、昭和天皇をモデルにした「太陽」を撮ったアレクサンドル・ソクーロフの新作映画「チェチェンへ アレクサンドラの旅」を紹介している。 おばあちゃんが兵舎にいる孫を訪ねる。たったそれだけの話が、なぜこれ…

東京で最初のロック喫茶Soul Eat

東京で最初にできたロック喫茶がどこだったか知っている。それは38年か39年前で、新宿厚生年金会館前のSoul Eat(ソール・イート)という店だった。広い店内にものすごい大音量のハード・ロックのレコードがかかっていた。なにしろ隣りに座る友人に大声で話…

輸入レコード、デクスター・ゴードンのOne Flight Up

保坂和志の「プレーンソング」(中公文庫)にこんな一節がある。 「俺なんかの頃には、(修学旅行で)高校生が外国行くなんて考えられなかったもんな。/だいたい、海外旅行がまだ自由化されてなかったんじゃないか」 海外旅行の自由化なんてことを持ち出す…

好きなバイオリニスト

娘が小さいときカミさんがバイオリンを習わせていた。その先生にバイオリニストは誰が好きですかと聞いたら、グリュミオーだと言う。聴いてみたらパールマンとは違うが美音のバイオリニストだった。それでグリュミオーでバッハの無伴奏バイオリンパルティー…

草野心平「大白道」を柴田南雄が作曲した

9月26日に上野の文化会館小ホールで「柴田南雄没後12年メモリアルコンサート 後期の室内楽と合唱曲ーー柴田南雄の遺したこと」が開かれた。プログラムは、 ・4つのインヴェンションと4つのドウーブル ピアノ:中嶋香 ・声とコントラバスのための五つの歌…

サントリーホールでの黛敏郎の印象

日本ペンクラブ・編「わたし、猫語がわかるのよ」(光文社文庫)を読んだ。日本ペンクラブの会員27人が書いた猫に関するエッセイ集だ。浅田次郎や米原万里、出久根達郎などが書いている。そのあとがき(森ミドリ)から。 あれは何年前だろう。 神宮前にある…

柴田南雄演奏会がある

9月26日(金)の夜、東京上野の文化会館小ホールで柴田南雄の演奏会がある。行きたいけど懐不如意だし悩んでいる。 「柴田南雄の遺したこと〜没後12年メモリアルコンサート〜後期の室内楽と合唱曲」だ。 http://www.tokyo-concerts.co.jp/index.cfm?lang=jp…

恩田陸「夏の名残りの薔薇」を読んで

恩田陸「夏の名残りの薔薇」(文春文庫)を題名に惹かれて読んだ。つまらないミステリだった。と同時に下手な文章だった。金井美恵子の見事な文章(「タマや」)を読んだ後だったので一層そう感じた。最初にあり得ない状況を設定しているが、それがリアリテ…

宮下誠の「20世紀音楽ーークラシックの運命」はお買い得!

宮下誠の「20世紀音楽ーークラシックの運命」(光文社新書)はすばらしい。現代音楽を実にていねいに紹介している。以前、同じ著者の「20世紀絵画」(光文社新書)を読んで気に入ったので、本書も期待して読んだが、期待以上の出来だった。ヴァークナーやブ…

ピアニストが読む音楽マンガ

青柳いづみこはクラシックのピアニストにして文筆家だ。CDより著書の方が多いのではないか。青柳いづみこ「ボクたちクラシックつながり」(文春新書)は副題が「ピアニストが読む音楽マンガ」で、「のだめカンタービレ」や「ピアニストの森」に即してピアニ…

ベートーヴェンはあんこう鍋

青柳いづみこがベートーヴェンが好きだと書いている。 私はドビュッシー研究かということになっているが、実は作曲家ではベートーヴェンがダントツに好きである。なぜか? 彼ほど緊密に作曲した人はいないから。 ベートーヴェンの音楽のつくり方というのはあ…

音楽の世界というのは、神童の墓場なんだよ

姉はピアノの蓋を開け、使い込まれている変色した鍵盤に指を置いた。「あなたはゆくゆく、コンサート・ピアニストとして名を成すだろうと思っていたんだけど」 「音楽の世界というのは、神童の墓場なんだよ」と彼はコーヒー豆を挽きながらながら言った。 村…

三宅榛名の「いちめん菜の花」というCD

三宅榛名のレクチャーコンサートを聴いたことがある。ずっと昔だ。講義をしながらピアノを弾いていた。講義の合間に三宅が飲み物を飲んだ。その時の仕草がある女性グラフィックデザイナーを思い出させた。2人とも手を頼りなくひらひらさせるのだ。とまどっ…

"Gay American Composers"というCD、デル・トレディチの悲しみ

"Gay American Composers"というCDがある。5人の作曲家が収録されているが、その中に私の好きなDavid Del Tredici デイヴィッド・デル・トレディチが入っている。デル・トレディチもゲイだったんだ。他の4人は知らない作曲家ばかりだ。Chester Biscardi, C…

進化すると見えなくなる

昔カラヤンが来日してサントリーホールで公演をしたとき、NHKFMで生中継された。ムソルグスキーの「展覧会の絵」が始まってすぐトランペットが音を外してしばらく変な音程が鳴り響いた。しかしカラヤンは演奏をやめることなく最後まで指揮をした。この時の演…

伝説の歌手、山崎ハコ

桐野夏生「OUT」は弁当工場に働く主婦たちの物語だ。彼女たちの労働環境は過酷だ。ベルトコンベヤーで何千食も作らされている。私も若いころゴーンさんが赴任してくる前の自動車工場で働いたことがあるから少しは分かるつもりだ。弁当工場の方が大変そうだけ…

オーディオ比べ、あるいは辛い恋も5年経てば忘れられる

オーディオ趣味は難しいものがある。わが家へ友人二人が別々の日に遊びに来た。二人ともいいオーディオセットを持っている。一人はスタジオでモニターに使うでかいダイヤトーンのスピーカー、もう一人はJBLのこれまたでかいスピーカーだ。ダイヤトーンはクラ…

西洋音楽は普遍的な音楽か

龍村仁監督の映画「地球交響曲第6番」を見た。インドの音楽家ラヴィ・シャンカールやアメリカのピアニスト、ケリー・ヨスト、アメリカの海洋生物学者ロジャー・ペインへのインタビューで構成されている。ロジャー・ペインは鯨の保護活動をしていて、鯨の声…

吉松隆の武満徹批判

武満徹が亡くなったとき、若い世代の作曲家の吉松隆が「レコード芸術」に次の文章を書いていた。亡くなった武満を皆が絶賛していたとき、この吉松と湯浅譲二の批判が印象に残った。長いけれど全文引用したい。 吉松隆「11月のカナリアは歌を歌いたかったのか…

音大の学生の悲劇

知人の娘さんがピアノを習っていた。小さい時から優秀でピアノの塾でもトップクラスだった。高校は普通高校だったが、週3回以上ピアノの先生について勉強していた。 その甲斐あって優秀な成績でT音楽大学ピアノ科に現役で入学した。しかし入学してまもなく…

山の子のうた

小学校の頃授業で教わって何度も歌った「山の子のうた」を都会では誰も知らないので驚いた。 「山の子のうた」 坂下茂巳作詞・作曲 歌声が あの小道にひびけば あの森かげ あの谷間 山にこの歌 山の子は 山の子は 歌が好きだよ 雨が降り てるてる坊主(ぼうず…

「卒業」

大江健三郎の「キルプの軍団」に「卒業」と題する曲が掲載されている。作曲:大江光、作詞:光君の弟のオーちゃん、となっているけれど、エッセイかなにかで作詞は大江健三郎とのことだった。 詞がとてもいい。 1.今日で終わりということ 不思議な気がするね…