大江健三郎の「キルプの軍団」に「卒業」と題する曲が掲載されている。作曲:大江光、作詞:光君の弟のオーちゃん、となっているけれど、エッセイかなにかで作詞は大江健三郎とのことだった。
詞がとてもいい。
1.今日で終わりということ
不思議な気がするね 不思議さ
2.風が吹いてる コブシがゆれてる
卒業だ さよなら
3.いつかふたりが会ったら
ぼくだとわかるかな きみだと
このメロディーをもとに後日フルートの曲に書き直し、「大江光の音楽」というCDに小泉裕のフルートで録音された。
まだCDが発売される前、友人二人に依頼し演奏してカセットテープに録音してもらった。一人は電子ピアノで演奏してPAを通して録音してくれた。気に入らない演奏を部分的に何度も演奏し直して録音したと言っていた。なるほどミスがない。
もう一人は普通のピアノで一気に弾いていた。ピアノの側にカセットを置いて、少しミスして。
二つのカセットを聴くと、電子ピアノの方はミスがないのになぜか面白くない。普通ピアノの方はミスがあるのに面白かった。しかも演奏が終わった後、外で遊んでいる子どもたちの声が聞こえる。これはジョン・ケージの「4分33秒」を思い出させる。演奏者が舞台に上がり、ストップウォッチを使って4分33秒計り、何もしないで舞台を降りるという演奏。その時聴衆のざわめきや外の世界の音を聞くような曲を。