音楽

村上春樹 編・訳『セロニアス・モンクのいた風景』を読む

村上春樹 編・訳『セロニアス・モンクのいた風景』(新潮社)を読む。ジャズ・ピアニストのセロニアス・モンクに関するアメリカの雑誌や単行本からの抜粋12編を編集したもの。それに村上春樹のモンクに関するエッセイと「私的レコード案内」を載せている。12…

青柳いづみこ『ピアニストたちの祝祭』を読む

青柳いづみこ『ピアニストたちの祝祭』(集英社インターナショナル)を読む。自身もピアニストであり、文筆家でもある青柳のピアニスト論は読んでいつも楽しく、しかも教えられることが多い。本書は主に雑誌『すばる』に書いたエッセイをまとめたもので、音…

青澤隆明『現代のピアニスト30』を読む

青澤隆明『現代のピアニスト30』(ちくま新書)を読む。1987年生まれのユジャ・ワンから1925年生まれのアルド・チッコリーニまで、現代活躍する30人のピアニストを取り上げている。日本人ピアニストとしては内田光子と清水和音の2人。 出版されてすぐ購入し…

『リヒテルは語る』を読む

ユーリー・ボリソフ/宮澤淳一 訳『リヒテルは語る』(ちくま学芸文庫)を読む。スヴャトスラフ・リヒテルはロシアのピアニスト。リヒテルとの対話をボリソフが記録したもの。ほとんどテープに録音したかのような自然な会話だが、すべて後日ボリソフが書き留…

青柳いづみこ『アンリ・バルダ 神秘のピアニスト』がすばらしい!

青柳いづみこ『アンリ・バルダ 神秘のピアニスト』(白水社)がすばらしい。アンリ・バルダ? 聞いたことのないピアニストだ、大昔のピアニストか? と思ったが、本の表紙に写っているピアニストの写真は古いものには見えない。読んでいくと分かるのだが、19…

佐村河内守のネットの評価

ここ何日か本ブログへのアクセス数が増えていた。どうしたのかとアクセス解析を見たら、ほとんど2007年5月14日のページに集中している。この日は亡くなった武満徹に対する吉松隆の批判を引用していた。 なんで今これが話題になっているのか。改めて読んでみ…

吉田秀和を読む楽しみ

吉田秀和『名曲のたのしみ、吉田秀和 第1巻』(学研)を読む。副題が「ピアニストききくらべ」、これはNHKFMで42年近く続いた放送から、吉田による語りの部分をほぼそのまま活字に起こしたもの。主に、毎月月末に放送していた「私の試聴室」から選んでいる…

「作曲家の個展 2013」権代敦彦を聴く

サントリーホールで「作曲家の個展 2013」権代敦彦を聴いた(10月11日)。権代は1965年生まれ、12歳の頃聴いたメシアンの音楽に惹かれ、作曲を志す。メシアンの音楽を通じ、カトリックへの関心が深まり、洗礼を受け、教会オルガニストも努める。 サントリー…

ガリーナ・ヴィシネフスカヤのヴォカリーズ

朝日歌壇にガリーナ・ヴィシネフスカヤのヴォカリーズの歌が載っていた(2013年6月24日)。作者は八尾市の水野一也氏。 金色の蜂蜜のような母音にてヴィシネフスカヤの歌うヴォカリーズ それがYOU TUBEにもアップされていた。 ラフマニノフ「ヴォカリーズ」…

青柳いづみこ『我が偏愛のピアニスト』を読む

青柳いづみこ『我が偏愛のピアニスト』(中央公論新社)を読む。青柳は現役のピアニストにして文筆家、ピアニストをはじめとする音楽に関する著作が多い。恩師を描いた『翼のはえた指 評伝安川加壽子』では吉田秀和賞を受賞し、仏文学者の祖父を描いた『青柳…

伊東乾『なぜ猫は鏡を見ないのか?』がおもしろい

伊東乾『なぜ猫は鏡を見ないのか?』(NHKブックス)がおもしろい。変なタイトルだが、副題は「音楽と心の進化誌」。伊東は作曲家、指揮者で東京大学作曲指揮研究室准教授でもある。猫や犬は鏡を見てそれが自分だと認識することができない、それがタイトルの…

アファナシエフの『ピアニストのノート』を読む

アファナシエフの『ピアニストのノート』(講談社選書メチエ)を読む。アファナシエフはカバーの紹介によれば、「クラシック界の世界的鬼才ピアニスト」。さらに「音楽とは何か? 音楽を演奏するとはどういうことか? 沈黙と時間は音楽とどのような関係を結…

片山杜秀『クラシック迷宮図書館』を読む

片山杜秀『クラシック迷宮図書館』(アルテスパブリッシング)を読む。本書は、雑誌『レコード芸術』に連載した「この本を読め!」をまとめて単行本にしたもの。音楽書の時評という類書のない企画だ。74冊が紹介されている。時評という性格のため、種々雑多…

吉田秀和『永遠の故郷−薄明』を読んで

吉田秀和『永遠の故郷−薄明』(集英社)を読んだ。これは『永遠の故郷』シリーズの2冊目、この「薄明」のほかに「夜」「真昼」「夕映」がある。『永遠の故郷』は吉田秀和が生涯で印象に残った歌曲97曲を取り上げ、原詩と吉田による訳詩、楽譜の一部を織り込…

グレン・グールドは局所性ジストニアだったのか?

青柳いづみこ『グレン・グールド』(筑摩書房)に、グールドが局所性ジストニアだったかも知れないとの記述が出てくる。 もっとも、グールドの右手の動きが左手より劣っていたかというとそんなことはない。各指は完全に分離・独立しており、中指、薬指、小指…

青柳いづみこの『グレン・グールド』がすばらしい

青柳いづみこの評伝『グレン・グールド』(筑摩書房)がすばらしい。著者がしばしばリサイタルを開いている現役のピアニストであることから、ピアノの演奏技術についても詳しく分析している。しかしそればかりではなく、たくさんのコンサートの記録−録音や映…

中川右介『グレン・グールド』を読む

中川右介『グレン・グールド』(朝日新書)を読む。24歳で最初のバッハの『ゴルドベルク変奏曲』を録音し、独特の演奏が高い評価を集め一躍有名になった。本書副題に「孤高のピアニスト」とあるように、人気の高いピアニストだったにも関わらず、32歳で突然…

『東京大学のアルバート・アイラー』を読む

菊地成孔+大谷能生『東京大学のアルバート・アイラー』(文春文庫)を読む。副題が「東大ジャズ講義録・歴史編」とあり、2巻本の上巻で、下巻が「東大ジャズ講義録・キーワード編」となる。これが途方もなくおもしろかった。本書は2005年5月にメディア綜…

ギャラリーQの茂呂剛伸個展の太鼓

東京銀座1丁目のギャラリーQで茂呂剛伸個展が開かれている(7月14日まで)。茂呂の展示しているのが彼が作った太鼓だ。茂呂は1978年北海道江別市生まれ。幼少より和太鼓奏者として世界各地を回ったという。一時期アフリカのガーナに渡り、演奏と太鼓制作を…

中川右介『山口百恵』を読む。

中川右介『山口百恵』(朝日文庫)を読む。5月末に発行された文庫本の書き下ろしで、これが初版になる。「はじめに」で書いている。 この本は、8年にわたる芸能活動での山口百恵の当時の「発言」をベースに、関係者が当時あるいは後に語ったこと・書いたこ…

『朝比奈隆 わが回想』を読む

矢野暢・聞き手『朝比奈隆 わが回想』(徳間文庫)を読む。これが本当におもしろかった。朝比奈は大阪フィルハーモニーの創立者で日本の著名な指揮者。聞き手の矢野暢は元京都大学法学部の教授。音楽に関する著書もある。京大では朝比奈の後輩にあたる。 戦…

吉田秀和さんが亡くなった

吉田秀和さんが亡くなった。5月22日夜だったという。98歳という高齢にも関わらず、惜しい人を亡くしてしまったという感が強い。いつまでも元気で生きていてほしかった。丸谷才一が追悼を書いている(朝日新聞5月29日夕刊)。 批評家は二つのことをしなけれ…

森本恭正『西洋音楽論』がすばらしい!

森本恭正『西洋音楽論』(光文社新書)がすばらしい! 副題が「クラシックに狂気を聴け」というものなので、発売直後に書店で見かけても手に取らなかった。うさんくさい気がしたのだ。それが新聞の書評で評価されていたので読んでみる気になった。 著者はヨ…

小山守の紹介する浅川マキの『CAT NAP』

『レコード・コレクターズ』2011年8月号で小山守が「浅川マキ」と題して、再発売されたマキの紙ジャケットシリーズを紹介している。 浅川マキというと、ファースト・アルバムに代表される70年代のフォーク〜ブルース的なイメージが強いかもしれないが、80年…

私の宝物「ショウボート昭和」というLPレコード

「ショウボート昭和」というLPレコードを持っている。劇団黒テントが黒色テント68/71と名乗っていた頃、今から30年以上前に劇団から直接買った。ジャケットから、 黒色テント68/71は、1975年(昭和50年)1月より、佐藤信作、演出による「喜劇昭和の世界」三…

スリリングな書「音楽のアマチュア」

四方田犬彦「音楽のアマチュア」(朝日新聞出版)を読んだ。著者は映画に関するプロだ。映画はほとんど試写会で見ている。それも時にはたった一人、四方田のためだけの試写会で見ることもある。若い頃は年間400本の映画を見た。最近は200本だ。大学で映画を…

大和田俊之「アメリカ音楽史」がおもしろい

大和田俊之「アメリカ音楽史」がとてもおもしろかった。具体的にはポピュラー音楽史。取り上げられているのは、ミンストレル・ショウ、ブルース、カントリー、スウィング・ジャズ、モダン・ジャズ、リズム&ブルースとロックンロール、ロック/ポップス、ソ…

「レコード芸術」7月号が吉田秀和特集だ!

雑誌「レコード芸術」7月号が吉田秀和特集だ。ほぼ巻頭に42ページも組まれている。中心は音楽評論家白石美雪による吉田秀和への3本のインタヴュー。最近完結した吉田の「永遠の故郷」4部作を起点に音楽批評の「現場」を語り、ついで「回想の1913〜1945年…

浅川マキのCD「CAT NAP」がようやく発売された

1982年にLPで発売された浅川マキのアルバム「CAT NAP」がようやくCDで発売された。すべて近藤等則の作曲による。そしてマキの歌が少ないアルバムなのだ。「マシン」のように歌わないで台詞だけという曲もある。トランペット:近藤等則、サックス・ピアノ:本…

やくざ小唄と練鑑ブルース

もう40年以上前になるが、横浜の鶴見で屋台のラーメン屋をやっていた。その時の仲間で安ちゃんというのがいた。本名を安藤と言った。安ちゃんは私より1つ上だったが、屋台の仕事に入ってきたのは私より1週間あとだった。そんなことで割と仲が良かった。安…