権代敦彦のピアノ曲「無常の鐘」

 先月27日に杉並公会堂小ホールへ矢沢朋子ピアノ・ソロ(〜現代音楽への誘い〜)を聴きに行った。当日のプログラムは、ラヴェルの「夜のガスパール」から「絞首台」を演奏した他はすべて現代音楽だった。最初に委嘱作品で世界初演ヨハン・ヨハンソンの「題未定」、次いでルイジ・ノーノの「苦悩に満ちながらも晴朗な波」、トリスタン・ミュライユの「マンドラゴール」、権代敦彦の「無常の鐘」、キャロリン・ヤーネルの「Love God」、平石博一の「ウォーク・マン」、ジョン・アダムズ「China Gates」、最後にもう一度ヨハン・ヨハンソンの「題未定」が演奏された。
 今回演奏会に行った目的は、権代敦彦の作品を聴くことだった。権代は何年か前サントリーホールだったかでオーケストラ曲を1回だけ聴いたことがあった。すばらしかった。いっぺんにファンになった。現代音楽が好きな銀座のギャラリー巷房の東崎さんにそのことを話すと、私も聴いたのよ、彼いいわねえと言う。早速のmixiの権代敦彦のコミュにも参加した。
 矢沢朋子の演奏会でもらったパンフレットの権代の作品の解説。

 ピアノ曲『無常の鐘』は、2009年11月に開催された第7回浜松国際ピアノコンクールの2次予選の課題曲として委嘱された。コンクールの課題曲にふさわしい難技巧の連続が続く。またグリッサンド奏法における円滑な演奏と手指保護のために、手袋の使用を権代が楽譜に記している。(矢沢朋子)
『無情の鐘』は、古来「無常の調子」とと言われ、鐘を鋳る際に理想とされた黄鐘調(おうしきちょう)を基本とした音構成。鐘の一撞きで生み出される「アタリ(衝撃音)」「オシ(安定した音高)」「オクリ(鳴り終わり)」という響きの漸次的な変化と、減衰から想を得た時間枠とによって成り立ち、仏教的無常観を表す。(権代敦彦)

 権代の曲は期待以上だった。ほかにどの曲も面白く聴けたが、委嘱曲のヨハンソンが良かった。ただ、客席数200くらいの小ホールで、観客は半分の100人もいなかったのではないか。すばらしいリサイタルだったのにもったいないことだし、主催者は赤字だったろう。
 日本人の現代音楽の作曲家で吉松隆西村朗に次ぐ若手の作曲家では、この権代敦彦と藤家渓子が好きだ。二人の作品が演奏されるならどこへでも聴きに行きたい。