2016-01-01から1年間の記事一覧

小泉武夫『絶倫食』を読む

小泉武夫『絶倫食』(新潮文庫)を読む。2007年から2010年にかけて雑誌に発表したもの。初め『月刊プレイボーイ』に連載し、同誌が休刊になったので、後半は新潮社のPR誌『波』に連載した。私は『波』を購読しているので、途中から突然この連載が始まって少…

外壁のパイプがおもしろい

地下鉄副都心線北参道駅の上あたりにあるビルの外壁に排管パイプだろうか、おもしろい造形のパイプが設置されていた。 秋山画廊へ行ったがあまりおもしろくなかったし、タカイシイギャラリーは展示替え中だった。小山登美夫ギャラリーはもう天王洲アイルへ転…

膀胱の容量、その他

夕べのNHK総合テレビの『試してガッテン』は「快尿!おしっこトラブル 全部解決の5秒ワザ」というものだった。頻尿・残尿・尿漏れがテーマになっていて、録画して見た。 番組中、成人の膀胱の容量が紹介された。300〜500mlだという。半年ほど前、友人と飲ん…

山本弘の作品解説(51)「冬の風越山」

山本弘「冬の風越山」、油彩、F4号(33.3cm×24.2cm) 1971年制作、山本弘41歳のときの作品。見られるように優れた色彩だ。山本は天性のカラリストで色彩の美しさは他に類を見ない。しかし、必ずしもそれを全開にすることがない。地味な色彩の作品が多いよう…

青柳いづみこ『ショパン・コンクール』を読む

青柳いづみこ『ショパン・コンクール』(中公新書)を読む。とても楽しい有益な読書だった。ピアニストで文筆家の青柳いづみこが2015年のショパン・コンクールのことを書いている。それも実況中継を聞いているような面白さだ。 青柳はリサイタルも行うプロの…

東京都庭園美術館のボルタンスキー展を見る

東京港区白金台の東京都庭園美術館でクリスチャン・ボルタンスキー展が開かれている(12月25日まで)。ボルタンスキーはフランスのアーチスト。展覧会のホームページから、 フランスの現代美術家クリスチャン・ボルタンスキー(1944年−)は、映像作品やパフ…

小川洋子・河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』を読む

小川洋子・河合隼雄『生きるとは、自分の物語をつくること』(新潮文庫)を読む。河合と小川が対談したもの。2005年と2006年に文化庁長官室で対談したが、その2度目の対談の2カ月後に河合が倒れ、翌年7月に79歳で亡くなった。軽い対談なのだが、さすが河合隼…

深町英夫『孫文』を読む

深町英夫『孫文』(岩波新書)を読む。孫文のことは現代中国史でも東洋史でも必ず扱われ、何となく知っているような気がしていた。孫文は死後、中華民国の政権を掌握した中国国民党によって「国父」と尊称され、中華人民共和国を樹立した中国共産党によって…

北村太郎『センチメンタルジャーニー』を読んで

北村太郎『センチメンタルジャーニー』(草思社)を読む。副題が「ある詩人の生涯」とあり、「荒地」の詩人北村太郎の自伝だ。とは言うものの、一般的な自伝とは少し違っている。北村は自伝の執筆を意図したが、悪性血液病を患っていて、余命2年以内しかない…

ギャラリー現の吉川和江展を見る

東京銀座のギャラリー現で吉川和江展が開かれている(10月15日まで)。吉川は1945年東京生まれ、1969年に武蔵野美術大学を卒業し、1976年ドイツのハンブルグ国立美術大学に入学し、1986年に同校を卒業している。現在ハンブルグ在住。1983年ハンブルグの画廊…

うしお画廊の井上敬一展を見る

東京銀座のうしお画廊で井上敬一展が開かれている(10月15日まで)。井上は1947年、香川県生まれ。1980年に福岡教育大学美術研究科を修了している。 ここ何年か銀座のみゆき画廊で発表していたが、みゆき画廊が閉じてしまったのでその展開先であるうしお画廊…

藍画廊の吉田絢乃展「ダイアローグ」を見る

東京銀座の藍画廊で吉田絢乃展「ダイアローグ」が開かれている(10月15日まで)。吉田は1987年東京生まれ。2011年多摩美術大学造形表現学部造形学科を卒業し、2013年同大学大学院修士課程油画領域を修了している。大学在学中からグループ展に参加し、卒業後…

『フェルマーの最終定理』を読む

サイモン・シン『フェルマーの最終定理』(新潮文庫)を読む。フェルマーの最終定理は次のように書かれている。 (xのn乗)+(yのn乗)=(zのn乗) この方程式はnが2より大きい場合には整数解をもたない。 17世紀の数学者フェルマーが上記について、メモ…

東京芸大陳列館の「彫刻ー気概と意外」を見る

東京上野の東京芸術大学大学美術館陳列館で「彫刻ー気概と意外」展が開かれている(10月10日まで)。東京芸大の彫刻科の教授と助教、助手、それに広島市立大学教授による彫刻展でとてもおもしろかった。 印象に残った作品を紹介する。 池島康輔「木花咲耶姫…

いりや画廊の中谷聡展を見る

東京入谷のいりや画廊で中谷聡展が開かれている(10月8日まで)。中谷は1959年、長野県生まれ。1981年に信州大学教育学部美術科を卒業している。2011年に愛知県立芸術大学大学院を修了、現在長野県松本県ケ丘高校に勤務している。新制作展をはじめ各地の彫…

村上春樹『職業としての小説家』を読む

村上春樹『職業としての小説家』(新潮文庫)を読む。これがとてもおもしろかった。村上が小説家としての自身の生活を実に率直に語っている。まず結婚してから大学を卒業し、会社に就職するのが嫌だったのでジャズのレコードをかけてコーヒーや酒や料理を出…

河合隼雄『物語を生きる』を読む

河合隼雄『物語を生きる』(岩波現代文庫)を読む。ユング派精神分析家の河合が日本の王朝物語を取り上げて論じている。古代の物語は作者不明のものや多くの人によって書き足されたものが多い。そのようなことから集団的無意識、共同的無意識を研究するユン…

柴田悦子画廊の浅見貴子展「定点観測」を見る

東京銀座の柴田悦子画廊で浅見貴子展「定点観測」が開かれている(10月10日まで)。浅見は1964年埼玉県生まれ、1988年に多摩美術大学絵画科日本画専攻を卒業している。1992年に藍画廊で初個展をした後、毎年個展を開いていた。またアーティスト・イン・レジ…

ギャラリー58で石川湖弓・柏倉風馬展を見る

東京銀座のギャラリー58で石川湖弓・柏倉風馬展が開かれている(10月8日まで)。2人とも東北芸術工科大学出身だ。このうち、石川湖弓について紹介したい。 石川は1994年、山形県生まれ。2016年に東北芸術工科大学芸術学部美術科洋画コースを卒業し、現在同…

山本弘の作品解説(50)「(題不詳)」

山本弘「(題不詳)」油彩、F4号(33.3cm×24.2cm) 1978年制作。山本弘48歳、亡くなる3年前になる。1979年は体調を崩して作品は極めて少なく、1980年は病院に入院していて作品はない。1981年に退院したが、少し制作しただけで亡くなってしまった。だからこ…

樋口良澄『鮎川信夫、橋上の詩学』を読む

樋口良澄『鮎川信夫、橋上の詩学』(思潮社)を読む。鮎川は現代を代表する詩人。戦後詩の中心だった「荒地」グループのリーダーでもあった。戦後詩人で3人選ぶとしたら、鮎川信夫、田村隆一、吉本隆明だろう。その鮎川論。 鮎川は十代の頃から詩を雑誌に投…

山本弘の作品解説(49)「子ども(仮題)」

山本弘「子ども(仮題)」油彩、F4号(33.3cm×24.2cm) 制作年不明。サインが漢字なので晩年、おそらく1970年代後半のもの。背景を塗ったあと、子どもの簡単な輪郭を描いて、顔に厚く絵具を置きパレットナイフで顔面を作り、目と口を描き込んでいる。洋服も…

塩田千春展「鍵のかかった部屋」を見る

横浜市の神奈川芸術劇場で塩田千春展「鍵のかかった部屋」が開かれている(10月10日まで)。会場は少し薄暗くなっていて、大きな部屋一面に天井から周囲まで赤い毛糸が張り巡らされている。 入口に近い半分の空間には5つの扉が設置されている。その扉の周囲…

eitoeikoの岡本光博展「69」がおもしろい

東京新宿区神楽坂のeitoeikoで岡本光博展「69」が開かれている(10月8日まで)。これがおもしろい。岡本は1968年、京都市生まれ。1994年に滋賀大学大学院教育学科を卒業している。その後1994〜96年、ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグに学び…

フィリップ・カー『変わらざるもの』を読む

フィリップ・カー『変わらざるもの』(PHP文芸文庫)を読む。重量級の傑作ミステリだ。カーはイギリスのミステリ作家。デビュー作は『偽りの街』だった。第2次世界大戦直後のドイツが舞台となっている。主人公のベルンハルト・グンターは戦時中ドイツの親衛…

『図説 吉原事典』を読む

永井義男『図説 吉原事典』(朝日文庫)を読む。知人(女性)があなた、こういうの好きでしょうとくれたもの。いささか誤解されているフシがあるが、とくにこの世界が好きなわけではない。でもせっかくもらったから、某所に置いて毎日少しずつ読んでいた。意…

ギャラリーなつかで「たまびやき」を見る

東京京橋のギャラリーなつかで「たまびやき」が開かれている(10月1日まで)。「たまびやき」は、毎年ギャラリーなつかで開かれる多摩美術大学工芸学科/陶/選抜作品展だ。今年は第8回になり、参加している作家は、安藤優、石井あや子、大井真希、太田浩子…

ブコウスキー『パルプ』を読む

チャールズ・ブコウスキー『パルプ』(ちくま文庫)を読む。ブコウスキーを読むのは初めてだった。『町でいちばんの美女』の題名だけは知っているという程度。いつかは読みたいと思っていた。 本書はミステリ仕立て、主人公が私立探偵ニック・ビレーンだ。と…

飯田市への旅

飯田市へ行って来た。11月初めに予定している山本弘展に展示する作品を借りるため、天竜峡の山本弘未亡人宅を訪い、作品を数点借りてきた。 その夜は昨年亡くなった友人の兄貴さんから、友人の遺品としてケンプの弾くベートーヴェンのピアノソナタ全集のLPを…

ヴァレリー・アファナシエフ『ピアニストは語る』を読む

ヴァレリー・アファナシエフ『ピアニストは語る』(講談社現代新書)を読む。アファナシエフはロシア(旧ソ連)出身のピアニスト、1968年のエリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝し、のちにベルギーに亡命した。数年前にも『ピアニストのノート』(講談…