山本弘の作品解説(49)「子ども(仮題)」


 山本弘「子ども(仮題)」油彩、F4号(33.3cm×24.2cm)
 制作年不明。サインが漢字なので晩年、おそらく1970年代後半のもの。背景を塗ったあと、子どもの簡単な輪郭を描いて、顔に厚く絵具を置きパレットナイフで顔面を作り、目と口を描き込んでいる。洋服も何色もの絵具を筆に取りまだらのままでざっと塗っている。
 小さな棒のような腕と足、奇妙に大きい頭と小さい体。ところがそのアンバランスな形が人形のようでもあり好ましい。お下げ髪みたいなものも見えるので女の子だと思われる。いつものように早描きだったのだろう。
 色彩も地味だが、さすがカラリストの山本、よく見れば深い美しさがある。
 山本が亡くなって今年で35年、その間遺族が大事に保管していて、久しぶりに公開することになった。
 10月31日からの銀座K'sギャラリーでの個展で展示する予定。