山本弘の作品解説(51)「冬の風越山」



 山本弘「冬の風越山」、油彩、F4号(33.3cm×24.2cm)
 1971年制作、山本弘41歳のときの作品。見られるように優れた色彩だ。山本は天性のカラリストで色彩の美しさは他に類を見ない。しかし、必ずしもそれを全開にすることがない。地味な色彩の作品が多いように思われるが、よく見れば複雑微妙な色合いに山本のカラリストぶりが確認できるだろう。そんななかにあって、この作品は山本のみごとな色彩が素直に表現されている。
 題名の風越山は長野県飯田市の西側にそびえる飯田市を象徴するような山だ。権現山の別名がある。山本は何度もこの山を描いている。
 41歳のこの年あたりから山本の作品の完成度が高まっている。もうしばらくすると画面が象徴的に変わっていって、ときに何が描かれているのか分からない場合も見られるようになる。その意味では分かりやすく美しい時代の典型的な作品だ。
 描いた当時、親しかった知人に贈呈したものらしく、ほとんど世に出たことがないと思われる。山本がある時期、こんな美しい風景画を描いていたことを知ってほしい。10月31日から始まる銀座K'sギャラリーの個展に展示する予定。