ストライプハウスギャラリーの大坪美穂展を見る

 東京六本木のストライプハウスギャラリーで大坪美穂展「Silent Voices」が開かれている(5月24日まで)。大坪美穂は1968年に武蔵野美術大学油絵科を卒業している。今まで銀座のシロタ画廊やギャルリ・プス、ストライプハウスギャラリーなど各地で個展を開いていて、韓国やインドのグループ展にも参加している。さらに2021年はアイルランドのアーツセンターゴールウェイで個展を開き作品が収蔵されたという。昨年は武蔵野市立吉祥寺美術館で個展が開催された。


 会場には黒く染められた多数の布の球が転がっている。それはまた瓦礫のようでもある。その上には和紙を撚り合わせた紐が大きな蜘蛛の巣のように広がっている。背景は黒いシルクスクリーンが置かれている。どこまでも黒にこだわった展示だ。

 それはアイルランドの詩人ヌーラ・ニー・ゴーノルの詩を踏まえている。その詩「黒」の冒頭、

 

今日は 黒い日

空は 黒

海は 黒

庭は 黒

 

木々は 黒

丘も 黒

バスは 黒

朝 子供たちを学校に運ぶ車も 黒

 と続いていく。ボスニア内戦をテーマにした詩だ。大坪美穂は吉祥寺美術館の個展でも、このヌーラ・ニー・ゴーノルの詩やパウル・ツェランの詩をテーマに造形していた。いずれも悲惨な死を取り上げている。

 大坪にとって作品とは決して美しいものではなく、死を見据えた根源的な構造を取り出して提示するもののようだ。昔、建畠晢氏が、日本のインスタレーションは皆お花畑だと言い放った、その真逆の世界だ。

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大坪美穂展「Silent Voices」

2025年5月16日(金)-5月24日(土)

11:00-18:30(会期中無休)

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ストライプハウスギャラリー

東京都六本木5-10-33

電話03-3405-8108

https://striped-house.com

東京メトロ日比谷線六本木駅3番出口より徒歩4分

六本木交差点よりアマンド脇の芋洗い坂を下って左手の横縞の描かれたビル