大内兵衛・茅誠司 他『私の読書法』(岩波新書)を読む。岩波書店の雑誌『図書』の昭和31年から35年にかけて20人の学者や作家などに執筆してもらったものをまとめたもの。具体的には、清水幾太郎、杉浦民平、加藤周一、蔵原惟人、茅誠司、大内兵衛、梅棹忠夫、八杉竜一、田中美知太郎、都留重人、吉田洋一、宮沢俊義、開高健、渡辺照宏、千打是也、鶴見俊輔、松田道雄、松方三郎、円地文子となる。
出版はもう65年前になるが、十分面白い。いくつか拾ってみる。
杉浦民平は毎月1万ページ以上を読む義務を自分に課すことにした。これは1日330ページということになる。だが月末も近づくのにあと4、5千ページも義務が残っているという時には大衆小説を読みだすという。吉川英二の『宮本武蔵』は戦後版で3,600ページくらいあるが、2日もあれば読みおおすことができる、と。
しかし、さらにすごいのが廣松渉で、別書の自伝によれば、学生時代の「読書量は、しかし、文学部生の標準ぐらいには達していたかと思う。1日平均700頁、つまり、毎月2万頁はほぼ読破していたつもりである」と書いている。
加藤周一は「読書のたのしみ」と題して書いている。
たのしみとしては、読書以上のたのしみを私は知らない。それ以外のたのしみは、いくらでもあるが、すぐに倦きるものばかりだ。ながくつづいたのは少くとも私にとって読書の他にはなかった。
大内兵衛は「このごろの読書」と題して、
私は大学在学中、ドイツ人ヴェンチヒという人に4年間にわたって、経済学の手ほどきをしてもらった。この人はほんとうにエネルギッシュな偉いプロフェッショナルであった。彼はこう教えた。書物は図書館でよんでいい。自分の本があればそれもよいが、必ずと考える必要は少しもない。図書館でよむ方が力が入る。本をよむときは必ずルーズ・リーフ方式のノート・ブックを持て。そして、新しい本を手にするとき、何よりもさきに、そのノートに本のタイトルと著者、発行年度などを書いて見出しカードとせよ。それには図書館の番号をも付記せよ。次に、本の性質により、目次だけとか、読んだ内容のうち必要な部分とか、そのレジューメとかを書きとめよ。そして最後に短くともよい読後の感想を書いておけ。こういうことには時間がかかり無駄だ思うかも知れぬが、そうではない。これを必ず一生つづけよ。いやしくも研究者なろうと思う人はこれをつづけよ。その収穫は後年にあると。
大内兵衛は新渡戸稲造にも読書の方法を教わった。新渡戸稲造は蔵書主義で、本をよむときは必ず青・赤の鉛筆をもおち、アンダーラインとサイドラインをできるだけきれいに引けと教えた。
実に楽しい読書だった。あれからもう70年近く経っているのだから、同じテーマでまたどこかで企画してもらえないだろうか。雑誌に連載してまとまったら出版してくれたらよいと思う。
