小川洋子『妊娠カレンダー』を読む

 小川洋子『妊娠カレンダー』(文春文庫)を読む。「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」の3短編が収録されている。ちょっと変わった小説集。『博士の愛した数式』が面白かったので手に取った。『博士~』の面白さには及ばなかったという印象。

 文春文庫の表紙は山本容子が描いている。小鳥がイチジクか何かの果実をつついている。この小鳥の脚がおかしい。箸のような棒状の脚が2本付いている。小鳥の脚は普通「く」の字状になっている。

 山本容子は版画家で、最初ウォーホルの初期の版画の影響が強い作品を作っていた。文房具や日常の品物などを単純な版画にしていた。そんな作風から想像すると、山本容子はデッサンの勉強をしっかりしなかったのではないか。しかし雑誌の挿絵が好評を博し人気画家になった。

 さらに山本容子は一流美術評論家中原祐介と同棲する。中原祐介は山本容子を国際的な美術展などに推薦する。しかし、やがて山本容子は中原を捨てることになる。このあたりのことは山本容子の自伝『マイ・ストーリー』(新潮文庫)に詳しく書かれている。

 デッサンが得意ではないのに人気を博した画家はほかにも片岡球子や辰野登恵子などを始め多数いる。逆にデッサン力に優れているのにつまらない絵しか描けない画家も多い。