東京神田のギャラリーN神田社宅で二藤建人個展「ヘルニア」が開かれている(12月1日まで)。二藤は1986年埼玉県生まれ、2010年に武蔵野美術大学彫刻学科を卒業し、2012年に東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了している。2013年から個展やグループ展で発表している。
ギャラリーで配布しているちらしから、
この度、二藤健人個展「ヘルニア」をギャラリーN神田社宅(東京)、Gallery N(愛知)の2会場、2部構成で開催いたします。二藤は子を授かった2013年より5年間、一般企業に勤めながらサラリーマン・アーティストとして活動し、重力、彫刻、戦争、労働、生活といったテーマに向き合ってきました。今夏に脱サラを果たした二藤。本展ではラテン語で「脱出」を意味し、医療用語としても知られる「ヘルニア(hernia)」をテーマに据えます。重力に対し直立の姿勢をとる人間の因果としての現象を、現代における共同体のあり方、個人のあり方に重ねます。
二藤も書いている。
二つのヘルニア
労働が生活を壊すとき
人の価値が金に置き換わるとき
防衛本能が他者の安全を脅かすとき
手段が目的への従属をやめるとき
システムへの信仰が暴走を始めるとき
そこにはヘルニアが起こっている。
不遇の中に生きる糧を育む時
気にも留めなかったものごとの価値に気づく時
繰り返されてきた過ちに目を向ける時
自らの至らなさの延長に世界の性質を見つける時
怠惰を振り切って行動を起こす時
そこにはヘルニアが起こりうる。
社会は誰のためにあるのか。
その答えが揺らぐ今
ヘルニアに気をつけて、ヘルニアを目指せ。
(二藤建人)
ギャラリーには雑巾で作ったネクタイ「labor’s symbol」、半透明な袋に入れられた管のようなもの「welcome」、木板に画用紙、雑巾、アクリルガッシュ、クレヨン等で描かれた作品「ヘルニアI-I」が展示され、奥の部屋には向かい合わせに積み重ねられたモニター「カジフカフカシの腰椎」、それに閉鎖された小空間の中が隙間を通してやっと見える「労働の美」というインスタレーションが設置されている。「労働の美」は照明が付いているときはぼろで包まれた棒状のものが覗けるが、照明が消えると規則的に壁に当たる音が聞こえる。単調な音の繰り返しが労働を象徴しているようだ。
「labor’s symbol」
「welcome」
「ヘルニアI-I」
ちらしの文章を読んでようやく理解できる、少々難解な作品だが、社会的なメッセージが込められていて、作家の思想が感じられて興味深かった。それが意味を表示するのみでなく、造形的にもおもしろかった。
このギャラリーは初めて来たが、なぜ今まで知らなかったのだろう。
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二藤建人個展「ヘルニア」
2018年11月17日(土)−12月1日(土)
13:00−20:00(日・月休廊)
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ギャラリーN神田社宅
東京都千代田区神田紺屋町46 アルタビル6F
電話080-3060-7809
http://www.f-g-n.jp/
※JR神田駅東口から徒歩2分
東京メトロ銀座線神田駅1番出口から徒歩2分