「木々との対話」の須田悦弘がおもしろい


 上野の東京都美術館で開館90周年記念展と銘打って「木々との対話」が開かれている(10月2日まで)。木という素材を使った作品を制作している5人の立体作家、國安孝昌、須田悦弘、田窪恭治、土屋仁応、舟越桂の作品を展示している。昨日は國安を紹介したが、今日は須田を取り上げる。
 須田は1969年山梨県生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業、植物の精密な木彫作品を作っている。それに彩色していて、ほとんど実物と見まごうほどだ。1993年に移動式の展示空間をリヤカーで引き、銀座の道路沿いのパーキングメーターに駐車して展示。1994年にギャラリイKで個展。千葉市美術館や原美術館などで個展をしている。



 今回國安とは真逆の作品を展示している。まず、國安の作品の隣りに狭いが細長い空間を作り、その空間を白く塗ってホワイトキューブ様の部屋を設置し、その一番奥の壁面に「バラ」の木彫作品を1点だけ逆さまに吊っている。この1点のために作られた贅沢な空間づくり。


 ついで國安の空間の横の高い壁面に「ユリ」を設置している。みごとな作りだが、少し遠いので細部はよくは分からない。写真は望遠レンズで撮っている。


 3点目はB2階からB3階を見下ろした途中に雑草が置かれている。雑草は1994年のギャラリイKの個展以来須田の定番だ。昔私が勤めていた出版社にその個展の案内をもらったが、それは『日本原色雑草図鑑』(全国農村教育協会)を参考にして雑草の彫刻を作ったからだと須田から聞いた。

 4点目は別の場所、アートラウンジのガラスケースの中に収められている「朝顔」だ。これもケースのなかに素直には収めないで、ちょっと外して設置している。至近距離で見られるので、精密に作られた細部がよく分かる。もう1点は美術情報室に展示されている。「露草」だが、どこに置かれているか係員に聞かないと分からなかった。撮影禁止。最後の2点、アートラウンジと美術情報室は入場券不要。
 須田がなぜこのように変わった展示を選択するのか、以前分析したことがある。須田は戦略家なのだ。
       ・
「木々との対話」
2016年7月26日(火)−10月2日(日)
       ・
東京都美術館
東京都台東区上野公園8-36
電話03-3823-6921