群馬県立近代美術館で新井コー児展「新井コー児20年目の独り文化祭」を見る


 高崎市にある群馬県立近代美術館で新井コー児展「新井コー児20年目の独り文化祭」が開かれている(12月20日まで)。新井は1973年群馬県高崎市生まれ。1996年多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻を卒業している。2000年に高崎シティギャラリーで初個展、2004年から銀座のなびす画廊で2014年まで毎年個展を開いてきて連続11回に及んだ。
 美術館のちらしから、

新井コー児は、昭和40年代の日本を舞台に女子高生や動物たちが自由奔放に戯れる世界を描き続けています。たち並ぶ電柱や銭湯のえんとつ、木造校舎に畳部屋、ちゃぶ台の上の吉田拓郎のLPジャケットや日本酒「八海山」と、画面を満たすのは、どれも作家本人が郷愁を抱き、愛し好んできたアイコンばかりです。それらを舞台設定に、屈託のない女子高生が縦横無(む)碍(げ)にたちまわるイノセントな世界こそ新井コー児独自のものです。よく見れば非現実的でちょっと怪しく、ドキッとするシチュエーションもありますが、なぜか自然で、見る人に警戒心や緊張感を与えることがありません。「私の作品を鑑賞してくださった全ての方々に元気な笑顔になってもらいたい」という作家の言葉からは、描かれる登場人物以上に無垢な精神性が感じられます。

 新井の描く世界はとても楽しい。11年間にわたって描き続けてきた女子高生の世界はあえて時代を錯綜させていて、吉田拓郎のLPレコードと日本酒の八海山とを同一画面に混在させている。
 新井の作品はイラストとどう違うのだろう。新井は多く油絵を描いている。ときに岩絵具で描いた作品もある。対してイラストはポスターカラー(ポスカラ)で描かれている。最近ではコンピューターグラフィックス(CG)で描いているだろう。ポスカラやCGはマチエール、媒体が透明で、伝えるべき意味に直結している。ところが油彩や日本画は描かれている内容や意味に至る前にマチエールがある。マチエールや媒体は物質性だ。イラストは意味を伝達して能事畢(おわ)れりとなる。油彩や日本画は意味と同時にマチエールがあるのだ。






 新井は11年間に数多くの女学生の絵を描いてきた。今回それらの作品が一堂に集められていて、ほぼ100点に近い。私は11回の個展をすべて見てきた。今回の群馬県立近代美術館での個展を見れば、過去11年分の個展を一挙に見ることができるのだ。とても有意義な企画だと思う。美術館のある高崎市は東京から意外に近いのだ。会期も年末近くまである。足を運ばれることをお勧めしたい。
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新井コー児展「新井コー児20年目の独り文化祭」
2015年9月19日(土)〜12月20日(日)
9:30〜17:00(入館は16:30まで)原則として月曜日休館
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群馬県立近代美術館
群馬県高崎市綿貫町992-1
電話027-346-5560
http://mmag.pref.gunma.jp/