ギャラリー川船の浜田浄展「重ねる・削る 2009−2014」を見る

 東京京橋のギャラリー川船で浜田浄展「重ねる・削る 2009−2014」が開かれている(10月31日まで)。浜田は1937年高知県生まれ。1961年に多摩美術大学油科を卒業している。1964年、東京杉並区のおぎくぼ画廊で初個展、以来数多くの個展を開いている。
 作品の多くは合板に絵具を塗り重ね、それを彫刻刀などで彫り=削り、その凹面に絵具を塗り、彫られていない凸面に別の色の絵具を塗っている。画面は木版画の版木のような凹凸で構成されている。一見ミニマル・アートを思わせるが、画面は無機的ではなく、表情を持っている。だが中心はなく均質な画面が広がっている。
 浜田の仕事の大きな特徴の一つは徹底した繰り返しだろう。遠目には色面が広がっているように見える画面が、近づけば無数の小さな筆触あるいは小さな彫り跡で埋められている。大画面の作品ではおそらく何千回ものそれらの執拗な繰り返しが行われているのだ。でありながらミニマルアートとは趣が異なっているのは何故だろう。
 以前にも書いたことだが、浜田の画面はイリュージョンを拒否している。作品は平面を装いながら微妙なしかしはっきりとした凹凸でできている。イリュージョンの媒体としての平面を裏切って、微かにしかし明確に3次元を追求している。つまり浜田の作品はほとんど平面を装った立体なのだ。すると、それは物質ではないだろうか。浜田は知らんぷりして、まるでトリックのように、ほら抽象表現主義の作品だよと煙にまいているようだ。大きく目を開いてよく見てみよう、だまされてはいけない。
 写真は全体図とともに部分を示している。







 来月、東京練馬区立美術館で、「浜田浄の軌跡」が開かれる(2015年11月21日−2016年2月7日)。浜田の全貌が見られるようで楽しみだ。
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浜田浄個展「重ねる・削る 2009−2014」
2015年10月19日(月)〜10月31日(土)
11;00-19:00(日曜休廊)
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ギャラリー川船
東京都中央区京橋3-3-4フジビルB1
電話03-3245-8600
http://www.kawafune.jp/