ギャラリー枝香庵の浜田浄展を見る

 東京銀座のギャラリー枝香庵で浜田浄展が開かれている(5月17日まで)。浜田は1937年高知県生まれ、1961年多摩美術大学油科を卒業している。1964年、東京杉並区のおぎくぼ画廊で初個展、以来数多くの個展を開いている。2015年には練馬区立美術館で回顧展が開催された。
  作品の多くは合板に絵具を塗り重ね、それを彫刻刀などで彫り=削り、その凹面に絵具を塗り、彫られていない凸面に別の色の絵具を塗っている。画面は木版画の版木のような凹凸で構成されている。一見ミニマル・アートを思わせるが、画面は無機的ではなく、表情を持っている。だが中心はなく均質な画面が広がっている。
 画廊で配布しているリーフレットに五十嵐卓が紹介文を寄せている。

……浜田の作品の通奏低音となるイデアは、浜田の敬愛する斎藤義重の中軸となる思想「絵画におけるイリュージョニズムの否定」ではなかろうか。(中略)
……浜田は合板の上に絵具で下地をした後に、彫刻刀などで削る無作為の身体的行為の形跡として、時間と行為を堆積していくのである。



上の作品の一部


上の作品の一部






 浜田の仕事の大きな特徴の一つは徹底した繰り返しだろう。遠目には色面が広がっているように見える画面が、近づけば無数の小さな筆触あるいは小さな彫り跡で埋められている。大画面の作品ではおそらく何千回かそれ以上もの執拗な繰り返しが行われているのだ。
 浜田の画面はイリュージョンを拒否している。作品は平面を装いながら微妙なしかしはっきりとした凹凸でできている。イリュージョンの媒体としての平面を裏切って、微かにしかし明確に3次元を追求している。つまり浜田の作品はほとんど平面を装った立体なのだ。すると、それは物質ではないだろうか。
 以前見た作品で、紙を鉛筆で何度も何度も塗り重ねたものは鉛筆が層を作り、鉛筆で作られた物質に変化していたことを思い出す。
 枝香庵は大小3つの空間がある。それらを全部使って浜田の作品が展示されている。座ってお茶などを飲めるスペースもある。なかなかくつろげる空間なのだ。
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浜田浄展「刻―堆積」
2017年5月8日(月)−5月17日(水)
11:30−19:00(日曜日・最終日―17:00)
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ギャラリー枝香庵
東京都中央区銀座3-3-12 銀座ビルディング7F・8F
電話03-3567-8110
http://echo-ann.jp