山本弘の作品解説(62)「秋雨」


 山本弘「秋雨」、油彩、F10号(45.5cm×53.0cm)
 1978年制作。晩年の48歳のときの作品。裏面に秋雨と題名が書かれている。降り続く秋の雨を描いているようだ。画面は縦の動きが主流になっている。まさに雨が降っている情景だろう。以前にも霧そのものをテーマにした「種畜場」という作品があったし、「芝塀」という柴垣そのものを描いた作品があった。霧そのものや細枝でできている柴垣や、この雨そのものを描くことなど他の画家だったら考えもしないだろう。そのような微妙なものに感興を覚えるのが山本なのだ。
 茶色を背景に太い筆触を縦に動かして雨を表現している。下方中央に横に走る白い絵具が置かれている。それが唯一のアクセントになっている。左右並びに下に見える白は絵具の塗り残しでキャンバスの地色が出ている。上方中央の白は絵具を置いている。
 秋雨というタイトルがついているので何やら書いてしまったが、抽象的な作品とみても構わないだろう。