ギャラリイKの八代萌展がすばらしい

 東京京橋のギャラリイKで開かれている彫刻の八代萌展がすばらしい(11月24日まで)。この個展は多摩美術大学大学院生の中から同大学の彫刻科研究室主催で優秀な学生を選抜し個展を開催したものだ。期待に違わない彫刻展だ。八代は1989年神奈川県川崎市生まれ、2011年に多摩美術大学美術学部彫刻科を卒業し、現在同大学院彫刻専攻に在籍中。個展は今回が初めてになる。


 まず画廊の真ん中に大きな立体が鎮座している。これは陶土と鉄でできている。熱した鉄を粘土に垂らし、その熱で粘土を固め、冷えた鉄が焼かれた陶土を接着して成形したものだという。中空なのに重量は100kgもある。そのような制作方法のため、完成した形は必ずしも作家の意志でコントロールしきれない。しかし、そのことは結果的にマイナスではなく、偶然とのコラボレーションともなって不思議な形の作品になっている。さすが、彫刻科研究室推薦だけあって、すばらしい個展だ。


 さらに画廊の床には小さな塊状の立体が並んでいる。2個ずつが組になって41組あるという。これは鉄の塊と陶土の塊の対になっている。ちょっと見るとミニマルで、しかしそれぞれの個体には表情があり、ミニマルに分類されることを拒否しているようだ。
 八代と話すと、大学の先輩である吉田哲也が最も好きな彫刻家だという。吉田哲也は私も最も好きな彫刻家である。私が八代の作品をひと目見て気に入ったのも、吉田哲也が好きだというある種共通の価値観故かもしれない。ひさしぶりに優れた立体作家の誕生に立ち会うことができた思いがする。八代の今後の展開を期待して注目してゆきたい。
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八代 萌展(多摩美術大学大学院彫刻専攻生選抜展)
2012年11月12日(月)−11月24日(土)
11:30−19:00(土曜日は17:00まで)日曜日休廊
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東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F
電話03-3563-4578
http://homepage3.nifty.com/galleryk