ギャラリー愚伶の西村宣造展「WHO ARE YOU? self-portrait」


 東京本郷5丁目のギャラリー愚伶で西村宣造展を見る(9月19日まで)。西村は1943年大阪生まれ、1963年に日大哲学科を中退している。長く銅版画を作っていたという。今回はすべて鉛筆画でほとんど自画像だった。いずれにしろ私は西村の個展を初めて見た。画家のテキストから、

私は、これまで自画像は40代に一度作っただけで、その後、自分の顔を描く気になれないまゝ歳月がすぎ、今60代最後の歳を迎え、"WHO ARE YOU? お前は誰だ?"と問いながら自分の顔に向き合い、どうしても今一度自画像を描いておきたくなり描き始めたのですが、自分の顔の心地悪さに唖然としながらも、遠い道程を歩いてきた私の今までの所業の数々、その多くは、ひとの魂を傷つけてきた、苦い、心が軋むような哀しみが皺の一本一本に刻印されているかと思うと、厭らしい程、いとおしくも思え、行先のない地図の中を彷徨うように、皺の流れを辿り"WHO ARE YOU?"と呟きながら、長い長い旅をしてきたような気がします。又、そろそろ旅に出掛けなければいけない"刻"が来たのかもしれません。何処へ……
Atomic EnergyからPrimitive Energyへ。

 とても良い自画像だ。画家には新宿2丁目のギャラリーポルトリブレで何回か会って話もしたが、いつも酒を飲んでいてノンシャランな印象だった。今回の自画像を見て、こんなに厳しい内面を持った人だったのかと驚いた。生身の印象と作品とが異なるとき、作品の方がその人の真実を表しているに違いない。生身の人はしばしば韜晦する。もう西村の処世術に惑わされることはないだろう。しっかり自画像を見てしまったから。
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西村宣造展「WHO ARE YOU? self-portrait」
2012年9月10日(月)〜9月19日(水)、日曜休廊
12:00〜20:00(祝・土は18:00まで、最終日は17:00まで)
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ギャラリー愚伶(ぐれい)
東京都文京区本郷5-28-1
電話03-5800-0806
http://www5.ocn.ne.jp/~gray
東京大学赤門前
地下鉄丸の内線・大江戸線 本郷三丁目駅から徒歩5分