歳時記カレンダーと荷風忌

 娘の趣味で家では「二十四節季・七十二候 歳時記カレンダーを使っている。4月の七十二候は6回ある。
6日:玄鳥至(げんちょういたる)、カッコのようにルビが振られ、ツバメが飛来する頃とある。
10日:鴻雁北(じょうがんきたす)で、雁が北へ帰っていく頃。
15日:虹始見(にじはじめてあらわる)、冬にはなかった虹が現れ始める頃。
21日:葭始生(よしはじめてしょうず)、ヨシ・アシが芽を出し始める頃。
25日:霜止出苗(しもやんでなえいず)、温暖になって霜はなく、苗が青葉を出す頃。
30日:牡丹華(ぼたんはなさく)、ボタンの花が咲き始める頃。
 4月の七十二候を引用したのは、「牡丹華(ぼたんはなさく)」が興味深かったからだ。「牡丹」が「ぼたん」だから、「華」が「はなさく」となる。華の漢字1字が「はな」の名詞にも「はなさく」の動詞にもなる面白さ。
 その4月30日は、また「荷風忌」ともある。永井荷風の命日なのだ。Wipipediaの「永井荷風」の晩年の項より、

1959年3月1日、長年通い続けた浅草アリゾナで昼食中、『病魔歩行殆困難』(日乗)となる。その後は自宅に近い食堂大黒屋で食事をとる以外は家に引きこもり、病気に苦しむ荷風を見かねた知人が医者の治療を紹介しても全く取り合わなかったという。そして、4月30日朝、自宅で遺体で見付かった。胃潰瘍の吐血による心臓麻痺と診断された。傍らに置かれたボストンバッグには全財産を常に持ち歩くという習癖の通り、2300万円を越える現金が詰められていた。

 そんな死に様は望むところだ。心残りはそれによってマンションの資産価値が下がり、娘に迷惑をかけてしまうことだけだ。
 娘が言う。父さん、そんな頃にはマンションも古びていてほとんど価値がなくなっているよ。そうかもしれない。