粘菌の認識

 朝日新聞に粘菌がネットワークを形成することが報じられている(2010年1月22日)。科学技術振興機構の手老篤史・さきがけ研究者らのチームが確かめたという。

 チームはA4判大のプラスチック板に、東京や横浜、大宮など関東地方の30カ所余りの駅の位置関係に合わせて、エサのフレークを置いた。山手線の部分に粘菌を置くと、エサを求めて広がり、1〜2日後には「駅」を結ぶネットワークをつくった。
 50回ほど実験を繰り返し、うまくネットワークを構成した20回程度のデータについて、輸送効率や事故などの障害が起きたときのネットワークの強さなどを数値化してみると、本物の鉄道網よりむしろ高い結果が出たという。
 今回の結果について、手老さんは「粘菌は自然界のなかで数億年を生き延びてきた。距離だけでなく効率やリスクなども考慮して最適なネットワークをつくる能力があるようだ」と話している。

 粘菌(変形菌)は単細胞生物だ。それがネットワークを完成させている。エサを認識して対応しているのだ。単細胞生物が認識している。人間でも小腸はタンパク質やブドウ糖を認識する。粘菌の認識と小腸の認識は似ているだろう。それが人間のいわゆる認識と異なるのは意識が関与するか否かだ。本来認識の定義に意識は欠かすことができない。だが、粘菌の行動を見ると、原初的な認識は意識を介在させなかった、というか意識のないところで行われていたことが分かる。意識を持った認識が特殊なのだろう。